古本屋で見つけてしまいました・・・へっへっへ。読みたかったのです。かねてからの念願でした。
月面に基地を作ったアメリカ人が、約3万年前に破壊され放棄された軍事基地を発見します。その遺跡は、かつて恒星間航行すら実現していた人類の祖先が、強大な敵に破れ放棄したものでした。発掘された資料を基に(その言語は古代シュメール語に類似したものだったそうな)恒星間航行用のエンジンを復元して、人類本来の故郷(アルタイルの第3惑星)へ飛んだアメリカ人たちは、3万年前に星間航法を奪われた祖先の生き残りと出会い、また、祖先を滅ぼした敵と出会うことになります。
平凡なSFならここでリベンジとばかりにその敵と戦うのでしょうけれど、この小説では、その敵に、祖先が星間航法を奪われた理由を尋ねるのです。その敵いわく、自分たちが地球人(性格にはアルタイル第3惑星人ですな)に星間航行を禁じたのは、地球人が力を頼みに征服を目指して宇宙へ進出してきたからだとのこと。それでは宇宙の多様性が失われるので、地球人の祖先は故郷の惑星に足止めされることになったのです。その敵は宇宙空港を焼き払い宇宙船を全て破壊していったのですが、都市を焼き払うことはなかったのでした。
ハミルトンがこの小説を発表したのは1960年です。彼は執筆時点で、50年後に祖国が世界を相手に何をしているか予見していたのでしょうか。ハミルトンはスペースオペラの旗手です。話のついでに銀河一つ吹き飛ばすくらいやる作家ですが、その最晩年にこのような枯れた小説を書いたのはどういう心境だったのだろう。
日: 2004年12月12日
「テレビ・ビデオの長時間視聴が幼児の言語発達に及ぼす影響」
またまた日本小児科学会雑誌にこんなタイトルの論文が出ました。筆者にはあの片岡直樹教授も名を連ねておられます。
1歳半健診時点で発語遅れのある幼児にはテレビ・ビデオ視聴が一日2時間以上の子が多いという調査結果から、テレビ・ビデオ視聴が発語遅れに「影響を与えている」という結論を出しています。
調査結果と結論の間に飛躍があるように思います。発語遅れの子に長いことテレビを見ている子が多いという調査結果が出たと言うことは本当としても(調査結果が嘘ならもう論じるに値しません)、発語遅れの原因がテレビの長時間視聴であるという因果関係の方向性はこの調査結果だけでは定まりません。長時間視聴は発語遅れ(あるいは発語遅れをもたらす他の原因での発達障害)の結果であるという可能性を排除し得ません。この論文の論法なら、例えば、脳性麻痺の子に車いすの使用者が多いという調査結果をもって車いすが脳性麻痺の原因であるという結論が出せてしまいます。
こういう、結論が先に立った研究を、厳密な意味の科学と呼んでよいのかなと思います。
テレビ・ビデオの長時間視聴を止めさせたいという結論が先に立って、その結論に矛盾しない「調査結果」を発表してくるものだから、これは自然科学の方法論とは異なってきています。むしろ科学の衣を着た政治的主張あるいは布教に等しいと思います。