「テレビ・ビデオの長時間視聴が幼児の言語発達に及ぼす影響」

またまた日本小児科学会雑誌にこんなタイトルの論文が出ました。筆者にはあの片岡直樹教授も名を連ねておられます。
1歳半健診時点で発語遅れのある幼児にはテレビ・ビデオ視聴が一日2時間以上の子が多いという調査結果から、テレビ・ビデオ視聴が発語遅れに「影響を与えている」という結論を出しています。
調査結果と結論の間に飛躍があるように思います。発語遅れの子に長いことテレビを見ている子が多いという調査結果が出たと言うことは本当としても(調査結果が嘘ならもう論じるに値しません)、発語遅れの原因がテレビの長時間視聴であるという因果関係の方向性はこの調査結果だけでは定まりません。長時間視聴は発語遅れ(あるいは発語遅れをもたらす他の原因での発達障害)の結果であるという可能性を排除し得ません。この論文の論法なら、例えば、脳性麻痺の子に車いすの使用者が多いという調査結果をもって車いすが脳性麻痺の原因であるという結論が出せてしまいます。
こういう、結論が先に立った研究を、厳密な意味の科学と呼んでよいのかなと思います。
テレビ・ビデオの長時間視聴を止めさせたいという結論が先に立って、その結論に矛盾しない「調査結果」を発表してくるものだから、これは自然科学の方法論とは異なってきています。むしろ科学の衣を着た政治的主張あるいは布教に等しいと思います。

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