ナイーブさの一形態

「テレビ・ビデオの長時間視聴が幼児の言語発達に及ぼす影響」
たくさんのコメントを頂きました。ありがとうございます。
おそらく、テレビやビデオを長時間見せるのはよくない、というのは日本の小児科医のコンセンサスになりつつあると思います。私のスタンスもまた、決して、どんどん見せましょうというものではありません。「まあ、何事もやりすぎはよくないものだというし、テレビも見せすぎはよくないかもしれんなあ。」くらいに思っています。「良くないかもしれんけど、学問的根拠があるわけでなし。俺が外来で小児科医として語る言葉はみのもんたより重いはずだし、そんないい加減な話で親御さんにプレッシャーかけても仕方ないし。それなりの事情はそれなりにあるもんだし。テレビの他に話すことは山ほどあるし」くらいでしょうか。例えば私は子どもが喘息で病院に来てるのにたばこ臭い親御さんには無茶苦茶厳しいですよ。1歳過ぎたのに麻疹のワクチン接種してない子の親御さんとかにも。
片岡教授一派に対して私がむかつくのは、彼らの思慮の足りないナイーブさに対しても、だと思います。むろん自閉症児の親としては、言語発達遅滞と自閉症の区別も付けられぬくせに自閉症の急増がテレビのせいだと言い切っちゃうような奴が小児科の教授をしているという事実には暗澹としますが(どのレベルの医科大学の・・・って敢えて言っちゃうよ。教授はもっと酷いこと言ってるんだから)。それに加えて、恐らくは子どもにテレビを長時間見せてはよくないという言説に表立って反論してくる小児科医は居ないというナイーブな油断が、こちらの神経に障ります。少々論立てが甘くても重要な主張をしてるんだから構わないだろうという態度が見えます。また小児科学会雑誌の、実際に本当に査読してるんかいと疑わしくなるような編集方針もまた、政治的意図が見えて苦しいです。
小児科学会の会場で片岡教授の講演にずいぶん多くの小児科医たちが熱心にメモをとっていたとか、批判的立場から覗きに行った方の報告をききました。おそらく学会後、各地の外来で、「ところでお母さんお子さんにテレビを一日何時間見せてるの?え、2時間?だめだめ!テレビを消して言葉かけしなきゃ言葉が遅れるんだよ。いいね!言葉かけだよ!」みたいな「育児指導」が熱心になされていることでしょうと想像して寒いです。
小児科医のメーリングリストで署名を入れて片岡教授への反論記事を投稿するとしたら相当の覚悟が必要です。おそらく、大半の参加者はそんな論争のために学問的根拠を得る労力を惜しみ、傍観にとどまることでしょう。そして「育児指導」に熱心な数人の小児科医を相手に歩み寄りのない不毛の論争を続け、疲れた方の投稿がとぎれて立ち消えになることでしょう。まあ、私は変なやつという風評がそうとう立ってるらしいので、無視されるだけかもしれませんが(それはそれでちょっと悲しいのですが)。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中