今日は休日の自宅待機番。午前中は休日外来をやって、NICUの担当患者も少し診て、午後は自宅でうだうだ過ごす。何をしていたのか記憶にも留まらない時間が過ぎていった。
昨日は「戦場のピアニスト」を観た。ゲットーとか強制収容所とかの話は聞いていたがあんな風だったとは知らなかった。実に無造作に人が殺されていった。殺される側としても、殺される人間が何故殺されねばならぬのかの理由もなくいきなり列の前に出され銃殺されるのでは、むちゃくちゃな理由であれなにか理由があるのよりも恐怖が募る。その恣意性が抵抗力を見事に殺いでいっていた。
「夜と霧」でも書かれていた「人は絶望で死ぬ」という言説も納得がいった。あの先の見えない状況ではたしかに希望を失ったら生きてはいけない。でも私は病院を奪われ家族を奪われてそれでもなお生きようとしていけるだろうか。いつまで逃げ延びていれば救われるのか、先も全く見えない状況の中で。
俺はあの主人公のような状況でお前は何だと聞かれて「医者です」と答えられるだろうか。彼が「ピアニストです」と答えたように。そして何か弾いてみろと言われて己の命を救うような素晴らしい演奏ができるだろうか。
おそらく医者が職業だと思っているうちは無理なのだ。
