小児内科の記事から

「小児内科」という、我々の業界筋のけっこうハイグレードな月刊誌に、子どもの事故予防情報センターの山中龍宏先生が「子どもたちを事故から守る」という連載をされておられる。今月号が最終回であったのだが、先生曰く「今回の連載を書くにあたり、取り上げる材料には一つも困らなかった」というのがなんともやりきれない本邦の現実である。さらに一節を引用する。

・・・事故予防で問題なのは医学の領域で事故予防そのものへの取り組みがないことにある。
たとえ話にしてみると、主に医学が関わるべき事故予防という1000mの氷壁がそそり立っている。その垂直の氷壁を一歩一歩よじ登って、頂上をめざさねばならない。しかし、現在の小児の事故予防として行われていることは、暖かいふもとの青い芝生の上で、「事故予防」という歌に合わせて皆でフォークダンスをしているように思える。その歌の歌詞には「注意しましょう」、「気をつけましょう」、「目を離さないようにしましょう」という言葉がちりばめられ、皆で踊っているそばには「事故予防センター」という名前の展示ケースが設置されている。この状態を続けていては事故を予防することはできない。

小児の事故予防に尽力してこられた先達の言葉だけに、胸に響く。小児の事故死を報道する記事を目にして私は随分と嘆息してきたが、しかし小児科医の私が小児の事故死に嘆息することは、山中先生に言わせればフォークダンスの品評会をしているに過ぎないのかも知れない。それを恥じて事故防止云々と声を上げても、それは観る阿呆から踊る阿呆に変わっただけのことなのだろう。
なにせ、0歳を過ぎたら本邦の小児の死因のトップは「不慮の事故」なのである。白血病よりも心臓病よりも、何よりも子どもは事故で死んでいるのである。しかしいったい、小児の事故予防を小児の脳死移植よりも喫緊の問題だと認識している大人がどれくらい居るだろう。小児科医のなかにすら少数派かも知れない。

大雪

深夜帯に一回も起こされなかったので、よく眠れたなと思って当直室を出てみたら外は真っ白だった。この冬一番の大雪である。
大雪と言っても積雪は深いところで足首程度だから、雪国の人にとっては鼻で笑う程度の可愛い雪なのだろうが、長崎に生まれた人間には、そもそも自然界に水が固体で存在すると言うこと自体が野蛮に感じられる。
NICUには朝から日勤の看護師たちが出勤の状況を伝えてくる。出町柳でバスもタクシーも来ないとか、北区からのどこそこで渋滞で動けないとか。どうやら京都のドライバーは冬になっても必ずしも凍結路面対応のタイヤに換装するとは限らないらしい。そんな一台が立ち往生すると覿面に渋滞である。深夜帯の看護師たちは半ば覚悟を決めていたのか、淡々と日勤のはじめの業務までこなしていた。偉いものだと思う。
同じ京都でも岩倉は市街地よりも雪深いので、岩倉からの通勤者はけっこう楽に来れたらしい。スタッドレスの四駆なんて乗ってるらしいし。
外来も閑散としていた。お陰で小児内科の今月号をほとんど読んでしまった。