当直が楽になった

当直が楽になっている。NICU当直医が外来を野放図に診療し続けていてはルール違反じゃないかという観点で、せめて準夜帯だけでもと大学から外来のアルバイトに来て頂いているためである。なにせNICUがNICUと名乗るためにはNICU専属の医師が24時間常駐しなければならず、この医師が他の業務を兼務することは、規則を字句通りに厳密に解釈した場合には禁じ手である。それを当院の小児時間外救急は従来NICU当直医が担っていたのである。事実上、小児時間外救急の費用をNICUで捻出していたようなものである。厳密にはルール違反である兼業の負担に疲れ果てて当直は辛いしんどいと愚痴ブログ書いていては世話はない。
現在、NICUが忙しくなければ(じつは絶望的に暇なのだが)5時から10時までは休んでいられる。些か変則的ではあるがこの時間を寝ていられたら深夜帯に少々忙しくても翌日にこたえない。かなり楽になって嬉しい。
なによりこのままでは誰か過労死するという危機感一心でこの外来ヘルプを雇うことになったのだが、行政への対策という面もある。終夜には至りませんがせめて忙しい時間帯だけでもダブル当直にするなど改善の努力をしていますから当面の猶予を下さいという腰の低さをみせたつもりである。世間一般からすれば甘いかも知れないが医療機関としては比較的低姿勢なのである。新生児医療も小児救急も大事な仕事だからNICU当直医が救急外来を診るに当たっては少々のお目こぼしは当たり前であるなどという尊大な態度では、行政側も不愉快であろう。不愉快が高じてルール違反だと指摘されるに至ったら、反省致しますと言って小児救急の看板を下ろすことになる。新生児の方を止めて小児救急だけに絞っては小児科医5人は雇えないから逆の選択肢はあり得ない。無い袖は振れないというのは独立採算の私立病院には至極当然の話である。とは言っても年間5000人とか6000人とかの小児時間外診療を行っている(ちなみに京都市では五指に入る数だ)病院がいきなり小児時間外診療を自粛してしまっては、京都市内の小児救急態勢もちょっとは応えるだろうとは思う。しかし応えるだろうから行政側も何も言えまいなどと尊大に構えるのはナイーブに過ぎる。そりゃあ私らだって小児救急を止める次第になれば「京都府からのご指導により」としっかりアナウンスして行政の皆様にも批難の矢面に立って頂きますよ。当院に小児救急停止に至るようなご指導を下さる際にはそのリスクもご勘案頂きたいと思ってます。現状で当地の小児医療を最善に運営するには当院は現状のまま新生児と小児救急を継続するのが宜しいと自負してます。行政の諸賢もそのお考えのもと現状にお目こぼしを下さっているのだと思います。それを見越したかのような半端な改革で申し訳ない事ながら、昨今のシュリンクを続ける医療経済の中で、今日明日の小児医療を維持しつつ将来へ向けて発展させるためには、時には臨機応変で狡猾な運営も必要だということで、ここは一つご容赦を願います。長々しいが、今の当院小児科のスタンスはそういう恭順とも反抗的ともつかぬスタンスである。
それを言えばこの話題をここに持ち出すのもナイーブかも知れない。でもお互いスネに傷持つ身だからと問題を表に持ち出すのを避けていては、改善すべき問題も改善できないのである。両竦みのまま立ち腐れては相撲にならない。現在の小児救急が世間の耳目を集めるほどの問題をシステムに内包しているっていうことは今さら指摘するまでもないだろう。改善のために何が必要かも考えて行くべきことだろうが、しかし現場の人間が傷むスネを庇って口を閉ざしていては、机上の空論ばかりが空回りすることになろう。
互いの立場は分かり合いたいものだと思う。行政側とて、規則さえ守られていればガキの数十人くらい死んでも構わんとか寺の数なら十分あるから幾らでも供養はできるとか考えるような無責任な鬼畜ではない。決して。互いが互いの立場で小児医療に関して責任を担っているという信頼を維持したいと思う。この信頼が無くなってはもう京都は人間の住む土地ではなくなる。
実はこのアルバイトの先生方に支払うお金があればもう1人常勤の小児科医が雇える。現状で雇えないのはやはり医局に人が足りないためである。もう1人増えれば、その一人を準夜勤に回すことができる。一人を準夜勤にすれば時間外診療もそうとう充実してカバーできる。当直明けの休みを確保することさえ出来るかも知れない。ただしそのためには常勤小児科医全員がそれなりにNICUの仕事が出来なくてはならない。NICUに手を出そうとしない小児科医が頭数を埋めている限りは当直明け休みなど夢の話だ。
大学から自転車でも10ないし15分(脚力による)という立地だと大学院の先生方に少しは気軽にお出で頂けるようで嬉しい。その一方でそんな近距離にNICUが二つあるってのは世間の標準からすれば無駄というものではないかという自戒は保ち続けなければなるまい。さらに言えば賀茂川をはさんで二つの大学病院が各々NICUを運営しているのである。自転車で行ける範囲内にNICUが合計三つあるのだ。

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