久々に忙しくなった。入院が立て込んだせいもあるが、久々に下っ端に戻ったせいもある。若手が大学院へ去るので、長期に渡りそうな入院の主治医は全て私に回ってくる。NICUのホワイトボードに書き込まれた入院患者一覧には、主治医の欄に私の名前がずらりと並んでいる。
昔に戻っただけと言えば言える。それなりに私も仕事の手際は良くなっているはずなので昔に戻っただけでは善くない。楽に診れるはずではある。実際、10年のうえから小児科医やっててNICUの十数人くらい一人で主治医できなくてどうすると思う。
猫も杓子もといった感じで若い医者が全員大学院へ行くのはどういうものかと思う。他の世界に例えるなら、例えばプロ野球でドラフトを経て入団した選手が、2〜3年して一軍にようやく定着できた頃に「野球の基礎は学びましたので野球をもっと深く研究したいと思います」とか言って大学の体育学部あたりに4年ほど去ってしまったりするようなものではないかと思う。そういう変わり者も一人二人はいてもいいのだろうけれど、毎年毎年4年目とか5年目とかの脂の乗りかかった世代が大挙して一軍を去るようなチームが強くなれるだろうか。そういう話とは違うのかな。なにせ私は研修医時代含めて大学では働いたことのない医者だから、思いこみでものを言ってるだけかもしれない。
私は息子が障害児ですから稼がなければなりませんし等と言い訳をしてアカデミックな出世競争からさっさと「とんずら」してしまいましたので、他人の選択に四の五の批判めいたことを言う資格はたぶん無いのでしょうけれどもね。でもみんなが大学院大学院と言って臨床から去ってしまうから私はいつまでたっても下っ端なんだよね。
猫も杓子も大学院へ全入するから、臨床の手が足りなくなって、大学院生が教授に命じられて臨床に派遣されたりする。大学院に授業料を払いながら研究に専念できず当直に追い回されて生活費を稼ぐ生活ってのも業腹なものだろうなと思う。大学院へ進むのは本当に優秀なごく一握りの人数で良いだろうよと思う。その替わりそいつらには気晴らし以上の業務は病院ではさせない。奨学金と研究費とで爪に火をともしながら研究生活に邁進して頂く。それが理想だろうよと思う。夜間救急当直が辛いとか辛くないとか言わせるような状況にはさせない。いらんことに手を出さず勉強に専念してろよと・・・たとえばMari先生とかに言ってやれる状況にしたいものだよね。
年長の医師に「先生も臨床ばかりで勿体ない。週1回でも大学へ行って何か研究したらどうです」と言われたことがある。なんかねえ。バカにされたというか、見くびられたものだというか、悔しかったですね。その「臨床ばかりで勿体ない」仕事にこちとら月7回とか8回とか当直してるんですけど。9時5時のあんたに言われたくないやって思います。
