1.この文脈で「発達障害をもちながら支援の足りなかった人」と言われて、既に施設で日常生活やら就労やらの支援が入っている人のことを持ち出されても、ご回答としてはまるで外してます。それで自分は分かってるって主張なさること自体、外れぶりが痛々しいくらいです。全然納得できません。
高機能自閉症やアスペルガー症候群といった概念はご存じじゃないのですか?広汎性発達障害を持ちながら知的障害が無いために従来の福祉の枠から外されてきた人たちのことをお聞きになったことはありませんか?
先天性障害はない、って何を根拠にそのような断定を?今までそういう診断がされてなかったから?現代まで放置されてきたも同然の障害概念ですから、もう50歳近くにもなる方なら診断されてないほうが、むしろ、よくある話ですよ。その生得的な社会性の障害から、二次障害としてアルコール依存症やら来してくることだってあり得ると思います(参考までに、私も、親の会の先輩から「酒は覚えさせない方が良いよ」と忠告されてます)。アルコール依存症に限らず、不適応のままで50歳にも至れば病状はそうとう修飾されてるでしょうね。この方に今からの診断は難しいと思いますよ。午前4時の救急外来でそれを否定診断できるとはとうてい思えません。その後の経過にも、それが問題になったという御言及はありませんでしたね。
ちなみに、私には、この患者さんの情報が与えられれば与えられるだけ、やっぱり基礎に社会性の障害があるんじゃねえの?って印象を強めてますがね。
必ずその診断が下るはずだと主張している訳ではありません。例えばそういう医学的考察もあり得るだろうと申し上げているのです。たまたま私は自閉症と新生児に興味を持ってるからこういう切り方をしたけれど、他にもこの方の背景を医学的に考える筋道は幾らでもあるはずですよ。そして、自分の知識や想像力の及ばないところにそういう幾ばくか深遠な事情があるのかもしれんと考えるような、そういう自分の限界のもう少し彼方へ足掻き出ようとする思慮深さをお持ちなら、「こういう人のために」云々の詰まらぬ詠嘆に足を引っ張られることも無いでしょうよ。他に考えることが沢山あるはずです。2年目の研修医にはむしろその方が普通ですよ。
2.守秘義務は、患者さんから個性を剥ぎ取ることの正当な理由になるのでしょうか。
医者が診るのは一度に一人。並列に何人か診ていても、その瞬間に診ているのは常に一人。そのはずです。そして、診ている相手は「生活習慣病のホームレス」でも「偽せ生保」でも「コンビニ受診生保」でもないのです。あくまで、一人の顔と名前を持った方。医者が診るのは「プロ野球選手」ではなくて桑田真澄氏であり、「IT長者」ではなくて堀江貴文氏ではないかと思います。
患者さんの顔と名前が見えておられましたか?
無我夢中で仕事を覚える最中の研修医さんには過大な要求でしょうか?
患者さんから種々の事情を剥ぎ取って「生活習慣病のホームレス」に仕立て、個人ではなく半ば象徴化した概念に変貌させ、そこへ便乗して普段「偽せ生保」とか「コンビニ受診生保」とかに感じておられる憤りを重ねておられる。彼自身が「偽せ生保」だったのですか?常習的なコンビニ受診者ですか?どうして彼が他の方々の品行まで責任持たなきゃならない?彼を個人名で語ればそんな連帯責任生じないけど、概念化してしまえば文章の上では連想ゲームみたいに滑らかにつながるんですよね。でもそれをやるのは医者として以前にレトリックとして卑怯だと思いますよ。
しかもそれを守秘義務と仰る。やれやれ。
まあ、何だかんだ言って、守秘義務云々の言い訳にたいするお返事はかなり簡潔に要約できますね。「そんなら最初から書くなよ」と。
3.「最近の研修医」云々についてはご指導賜り厚く御礼申し上げますが、あなた一人に当てこすってるのは読めば分かることですし、他の研修医は誰も応えてないと思いますよ。
