スイングガールズ

小児アレルギー学会とかなんとかで二人欠勤の土曜日午前中。なのに予防接種外来にはてんこ盛りに予約を入れてある。インフルエンザワクチンの季節なんだから仕方のないことではある。マネージメント拙いねと言いつつ外来の応援に入る。
本来、私は土曜日はNICU担当で、ぼちぼちと週末の仕込みをしつつ来週の計画をぼんやり考えているうちに過ぎるはずの日なのだが、今日は多少は忙しい思いをした。土曜日は普段よりも受診者の年齢がすこし高く、疾患がより軽症で、「一週間引っ張ってたんですけど良くならなくて」の普段よりスローペースな受診が多い。お父さんが連れてきて状況のよく分からない子も多い。どうも勝手が違う。
帰ってから、録画してあった「スイングガールズ」を観た。愉快な映画だった。本仮屋ユイカさんがよい演技をしていた。NHKのドラマを観ててっきり大根だと決め込んでたのだが。
4ヶ月特訓の成果とはいえけっこう上達するもんだね。私も金管小僧だったので、特に彼女らが下手くそな時代の音には記憶が重なって面はゆかった。できれば抑圧しておきたい記憶ではある。マウスピースをぴいぴい鳴らしていたころの記憶。でも金管楽器の音がそれなりに鳴ったときって嬉しいんですよね。量が質に転換する一瞬ってのを身をもって体験できます。

テオフィリンが使いにくくなった

ぜんそく薬「テオフィリン」、乳幼児の使用制限へ

どうして学会が新しいガイドラインを出さないうちにこういう先走った報道をするかねとまず思った。今日は全国の小児科外来で「うちの子の喘息の薬は大丈夫でしょうか」とご心配の親御さんが殺到されたのではないだろうか。でも報道機関としては知り得たことを迅速に報道するのが使命ではあろう。この記事はかなり正確に事情を捉えてある。誤報とするべき情報は何もない。であれば読売新聞を責めるのは不当である。
この記事はたぶんに小児アレルギー学会の誰かが監修した記事である。業界の内部にいる目で読めば一目瞭然。とすればこの記事がこの時期に発表されるのは学会の意思なのか?学会前日の外来が大混乱ってのはまずくないか?福井で開催される学会に出向くのに前日から休診にしてる先生も多かろうけど、学会から帰ってみたら留守を頼んだ代診の先生が烈火の如く怒ってるってことになりますぜ。まあ私は小児アレルギー学会員じゃなし、この学会の運営方針に口を出す立場じゃないけどさ、敢えて言わせて貰えば、明日から小児アレルギー学会があるってのなら、その学会で討議した新ガイドラインを各医療機関に配布して周知徹底したうえで世間一般に公表するってのが順序のように思うけれども。特に私のような、小児アレルギー学会の会員ではないのに日常診療で喘息の子を診ないわけにはいかない立場としては、その筋の人らをさしおいて独自のことを申し上げるわけには行かないんだ。そういう先生、多いと思いますけどね。
でも何が怖いって、喘息診療で一番怖いのは喘息発作の呼吸障害で子どもが亡くなったり後遺症を負ったりすることなんだけれどもね。テオフィリン関連のけいれんとか脳症とかが怖くないとは申しませんけれども、学会には、テオフィリンを使わない急性発作の治療法に関しての対案を、ガイドラインとしてちゃんと出してくれることを求めたい。長期管理には吸入ステロイドが有効だとしても、いま目の前で発生している喘息発作を取り敢えず止めるには吸入ステロイドでは足りない。発作を止めなきゃ長期管理もあったものじゃあない。喘息発作は夜間に起きるものだし、夜間の救急外来で発作の治療に当たってるのは必ずしも小児アレルギー学会員ばかりとは限らない。むしろ新生児学会の会員であることがよほど多いんじゃないか?そういう非学会員にテオフィリンを使うなというのなら、他のこういう薬を使いなさいと、具体的な対案を公式に提示してほしい。是非にも。「テオフィリンは喘息治療に精通した医師が注意深く使用する」なんて書くだけでは駄目ですよ。それならと夜中の救急外来に学会員の諸先生方を呼び出しますよ。「テオフィリンを使う局面ですから喘息診療に精通した先生に投与をお願いします」とか言ってさ。
それと、新生児科としては、乳幼児に使用制限するからってNICUで未熟児無呼吸発作の子にテオフィリンの処方をするのまで制限しないでよねと願いたいところである。