腹を冷やすとは

乳幼児の嘔吐下痢が流行する季節となった。柿が赤くなると医者が青くなると称して10月は一般外来は閑散としているものなのだが、11月になって受診者数が増えてくると、その大半が嘔吐主訴となる。今日も来る子はみな青い顔をしていた。待合いで吐いた吐物の臭いを発散させている子もちらほらとあった。
昔は冬場の嘔吐下痢をすべてロタウイルスのせいにしていたのだが、最近は色々と別口のウイルスが見つかってきている。11月は小型球形ウイルスの季節。12月いっぱいまで嘔吐下痢を診て、入れ替わるようにインフルエンザの時期が来て、続いてロタの波が来る。
嘔吐下痢症の子の腹は、触ってみるとぐんにゃりと弾力を失っていて、押し込んだ手形が手を放しても残っているような感じがする。また、冷たい感じもする。単純に温度が低いと言うより、こちらの手のひらの熱をすっと奪われる感じ。暖めても暖めても熱を吸い込むばかりで全然暖まらない感じというか。物理系の人は比熱が高いと表現するのかな。昔の人はこれを称して「腹を冷やした」と表現したのだろうかとも思うことがある。
風邪の最盛期の体熱感と、治りかけの時期の体熱感とでは、体温計が同じ数字を示していても、体に触れるとなんとはなく熱さの感触が違う。最盛期の熱さには「芯」がある。治りかけの時はその芯が抜けている。聴診器を当てながらそっと左手を子どもの胸や腹に添えてみて、かえって聴診器よりも手から伝わる情報のほうが多いような感がある。
主観的なことなんですけどもね。でも達人になると、それこそ額に手を当てるだけで子どもの体の中が隅々まで見えるんじゃないかな。どうだろう。

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