学会から帰ってみると病院のオーダーリングシステムが変更されていた。
オーダーリングシステムが変わるたびに(これで2回目)出力される印刷物の体裁が変わるので、そのたびに仕事の手順に変更を迫られる。大人数の看護師を仕切らねばならないNICU主任が頭を抱えている。なにせそこら中に事故の火種がまき散らされたようなものであるから。
我々はいちおう医療の現場のプロであるのに、どうしてプログラマと呼ばれる人たちに現場の仕事の仕方を指図されないといかんのだろうと思う。密室にこもって作り上げたプログラムと従来のとは似ても似つかぬワークシートを持っていきなり病棟に現れてくれてもねえ。何で彼らはプログラムの体裁を決めるときにちょっとでも病棟へ足を運んで実際の仕事をどうやってるか取材しようとさえしないのかね。彼らは航空機の操縦席を電子化するときにも、パイロットに飛行機の飛ばしかたをご指導賜るのだろうか。今後は操縦桿じゃなくてマウス使ってね、とか。
救急外来では夜間初診でそのまま入院になった赤ちゃんの入院登録がなぜかできなかった。どうやら入院は前もって申し込んで正規のリストに登録しておかないと受け付けられないプログラムの仕様らしかった。って、そんなお高くとまった商売してていまどきうちみたいな弱小病院が生き延びていけますかね。
こんな体たらくだから、うちの病院はオーダーリングシステムを電算化しても紙カルテや伝票類もそのまま書かされる。なんだか医事課員の仕事を片手間に肩代わりしてやってるような気分がする。CBCひとつ採血するにも、紙カルテにCBCと書いて、CBCの紙伝票にエンボス押してチェック入れてサインして、コンピュータの入力画面を開いてCBCと入力してバーコードラベルを印刷させるわけだ。二重手間どころか三重手間である。しかもこのバーコードラベルを印刷するレーザープリンタが「インターナショナル・ボリシェビキ・マシーンズ」社製の一枚ごとに紙詰まりする仕様のプリンタである。ようやく印刷できたと思ったら台紙とバーコード印刷がずれている。わざわざハサミで切って採血管に貼らねばならぬ。きいきい。院長は内科医が雇えないと頭を抱えている。雇えないのは当たり前である。こういうバカな仕事がやりたくてうちみたいな貧乏病院に志願してくる奴など危なくて雇えるものか。
