車椅子が入れない病院には新生児搬送にも行けない

私らは病院関係者だからバリアフリー投資は当然と思っている。現代の病院で車椅子にのって動けないなんて信じられないってものだ。
新生児搬送用の保育器はバッテリーや人工呼吸器や酸素・圧縮空気のボンベを載せてもなお、外形の大きさは車椅子サイズに納まっている。保育器を救急車に積み込むためのリフトは元来は車椅子用だから当然である。スロープにせよエレベーターにせよ、車椅子で動ける範囲ならたいがい入ってゆける。
しかし搬送先の産科医院の構造によっては、搬送用保育器を救急車から降ろせない病院もある。玄関にいきなり高い段差があったり、病室までのエレベーターが無かったり。一応降ろして行けるところまでは行くが難儀だという病院もある。絨毯の毛足が深くて車輪が埋まったりとか。
取り敢えずの初期処置を済ませていざNICUへ帰ろうというときに、分娩室のラジアントウォーマーから直接に搬送用保育器に赤ちゃんを移せるか、それとも赤ちゃんを抱きかかえて徒歩で救急車まで戻らねばならないか、この手間の差は結構大きい。特に赤ちゃんに気管内挿管をした後なんて、誰かが赤ちゃんを抱き、歩調を合わせて別の誰かが赤ちゃんの気管チューブを保持し加圧バッグで人工呼吸を続けなければならない。それを、大抵は2階とか3階にある分娩室新生児室から駐車場の救急車までだ。途中で事故抜管でもしたら最低だ。逆に病室までも車椅子が入るような病院なら、搬送用保育器に乗せて安定した赤ちゃんを病室のお母さんのところまでちょっと運んで面会してから搬送に出発なんて、すこしは小粋な配慮もできようというものだ。
東横インには障害者向け設備がない。それを徹底したコストダウンと捉えて今後も東横インを利用するか、あるいは法令を軽視して存在するべきものを省略するホテルなんて他に何を省略しているか分かったもんじゃないとして東横インを忌避するか、それはもう利用者側の判断だろうし、その集合知で東横インが今後繁盛するか衰退するかが決まるんだろうし、その成り行きには現代の日本社会の意識が如何様にあるかがちょっとは反映されていると考えてもよいんだろうと思う。別カテゴリーのホテルに関する考察はよくわからんにしてもそれは「誰がためにかりんは鳴る」この記事に賛成。新生児科としては、これから産科医院をお選びの際には、駐車場から分娩室あるいは病室まで車椅子で入れるかどうかを、横目で見ておかれるのも宜しいかと、我田引水な付け加えをしたりする。
ただ障害者団体は言わずもがなのことだからと黙ってたら棚上げされ無視されていくのが世の常だから、野暮に見えても言うことは言うというのはけっこう重要な戦略なのではないかと思う。それと、マスコミとしては誰かの怒りの絵が欲しかったんで、怒りの声を上げた障害者団体が取り上げられることはあっても、ボイコットを始めた障害者団体ってのは報道されないんじゃないかとも思う。実際にはバクバクの会でも自閉症関連でも内部情報としては種々の選択や工夫の情報はけっこう行き交っている。それを外へ出してみると案外と面白いのかも知れないと、かりんさんの記事を拝読して考えたりもした。ただ東京ディズニーランドのホワイトカードは随分と悪用された挙げ句に廃止になったし云々と、負の面も無いではない。
付け加えるなら神戸空港の障害者向け駐車場に車椅子では越せない段差があるってのは呆れたし笑えた。あの空港を象徴するようなお話だと思った。たぶん神戸空港も障害者が利用するのを想定してなかったんだろう。でも飛行機が離発着するのは想定してるよね?滑走路から駐機場までの間にも段差がないか確認した方がよくないか?ジャンボジェットが越せないような段差があったりするかもしれないよ。