アンカテ(Uncategorizable Blog) – 退却戦としての治安維持(ネットに関わる領域における)のあり方より
とにかく、その時点での世論の動向に乗っかってグレーゾーンに手を出すとヤケドする、というのは、もはや法則として確定している。
だから、こういうことの善悪を裁定する機関は、次のような性質の別の機関(「情報なんとか委員会」みたいなもの)にまかせた方がいいと思う。
* どうやっても権威が失墜し批判が多いことを想定して、警察や検察本体から切り離す
* 多少拙速でもいいから状況の変化にすばやく対応できる身軽さが必要
* 対象領域や原理原則を明確化して、その原理原則はきちんと政治的な承認を得る
* その機関の運用自体の透明性、公平性を警察、検察が外からチェックする
そのようにして、警察や検察は、狭い分野の治安維持できちっとした仕事をしてほしい。それが国民にとってもいいし、彼ら自身にとっても結局はいい結果をもたらすと思う。
元記事はネットに捜査機関が関わることへの警鐘であったが、医療に捜査機関が関わることにも同様の問題があるよなと思った。で、essa氏が記事のまとめとされた上記提言の「別の機関」は我々の業界にこそ切実に求められていることだろうと思った。
医療に警察や検察が絡むことのデメリットは警察・検察側にもあるわけで、「警察のご厄介にならないように」という言葉は比喩ではなく、実際に医療紛争は本当に厄介なのだ。医者が偉そうな人種で捜査機関の言うことを聞かないから厄介だというのではなくて、現代の医療の水準ってのが猛烈に高度で精緻になってしまったから。今回の福島県の大野病院事件では、全国の医師がこぞって検察を批判する側にまわっちゃったわけだが、そしてその批判は感情的反感ばかりではなく専門的な知識に立脚したプロとしての批判だったわけだが、それだけで警察や検察の権威はある程度は失墜したんじゃないかと思う。
医療に関わるトラブルの内容を分析する、専門的知識と中立性を確保された第三者機関の設立が、医療の業界内部からも切望されている。でもその機関は、できあがってみればessa氏の分析どおり、「どうやっても権威が失墜し批判が多い」、まるで検非違使のような不浄職になるんだろうなと思う。その機関の権威を今の医療業界が本当に尊敬することになるだろうかと一抹の疑問はある。よほど構造的にその権威を上手に担保しておく必要がある。
その汚れ役を買って出る人物が医療の業界内部にあるんだろうかと思う。私自身にもその覚悟があるかどうか、今ひとつよくわからない。でもまあ、今回の不当逮捕事件の教訓として、専門的知識を有さない外部の捜査機関が介入してくることの不条理さをしっかり記憶しておかねばならないと思う。