今日は新築の病棟の引き渡しだったらしい。重症の赤ちゃんに救急外来で挿管して他院へ搬送しての帰り道、新館のロビーに病院の偉い人がたくさん集まっているのが見えた。
夕方の回診が終わって医局に戻ってみると、医局秘書が妙にはしゃいで、中を見てこいの何のと医者に誰彼となく喋る喋る。昨日朝の当直入りから緊急搬送が入るのと出るのと2回、どうやら全国平均の数倍の人数は診たらしい救急外来、引き続いて月曜朝の一般外来。へろへろにくたびれた頭に正直、こういう陽気さはやかましすぎる。震災の2月に神戸から所用で出てきたときの、京都の野放図な平穏さに憶えた違和感を、久々に思い出す。
不当な怒りだとは重々承知ながら、週休二日の人に差しで口をきかれるとカチンと腹が立つ。こちとら4月の1ヶ月間で終日病院に出る義務のない日は2日と30日だけなんだけどね。
若手はまだほんとに若くて素直だから、医局秘書に誘われて新館を見物に行くことにしたらしい。院内PHSを呼び出してきて、先生も行きませんかと誘ってきた。人懐こい奴だと思った。どこから入れるんだと聞くと、玄関でも渡り廊下でも良いですけど履き物を替えなければなりませんと答える。新館って二足制だったか?と聞き直したら、新館を汚しちゃいけないというお達しだそうだ。へなへなと崩れそうな気分がした。どうやら旧館で33時間連続勤務した俺は汚くて新館にはすんなり入れてはもらえないらしい。週休二日の面々も履き替えはしてるんだから俺ばかりそういうことを言うのは僻みだよとは分かってるんですけどね。いいよもう面倒くさいと謝してPHSを切る。若手には罪はないし。
