適切に蘇生を始める

Neonatal Resuscitation Textbook
American Heart Association American Academy of Pediatrics Committee on Fetus and Newborn Dana Braner / Amer Academy of Pediatrics
ISBN : 1581100566

“At every delivery, there should be at least one person whose primary resposibility is the baby and who is capable of initiating resuscitation.”(P.1-14)

新生児の蘇生でもっとも大事なことは、「適切に開始すること」である。挿管が出来るとか点滴が入るとかは、いわば些末な手先の問題である。より大事なことは、この子には気道確保が要るとか点滴が要るとかいう判断が、的確かつ迅速にできることである。むろん、要ると判断したが実技は出来ないでは話にならんから、些末な手先の問題は確実にこなせねばならぬ。しかし、要る状況だとすら判断できないようでは、話にならなさのレベルが違う。
挿管挿管と研修医は血眼になるが、気道確保の手技は経口挿管が最も簡単である。バッグ&マスクのほうがよほど難しい。これは大方の新生児科医あるいは麻酔科医の諸先生方には御同意頂ける見解だと思う。
で、この判断であるが、けっこう奥が深いと思う。私も、新生児科を勉強して、完璧に理解できたような気になった時期もあり、また分からなくなった時期もあり。けっこうきつい状態から、見る間に回復してくる赤ちゃんもある。そういう子に立ち会うと、要らぬ手出しをせず赤ちゃんの自己回復を待つのが名医なような気になる。一方で、最初の30秒に下すべき決断を、うだうだと2分3分迷ったあげく、回復不十分で後手後手の蘇生になって、かっこうわるい立ち会いだったなあと、後から激しく悔やむこともある。いや、それでも赤ちゃんは見事に回復してこられるから、大事には至らなくて済んでるんですけどね。でも、幸運が味方したよね、とは思う。
すべての分娩には赤ちゃんに専心するスタッフが最低1名以上立ち会うこと。このスタッフは赤ちゃんの蘇生を適切に開始できる人物であること。この、最新の新生児蘇生テキストに記載された要請が、今後のスタンダードになっていくのだろうと思う。そうなったら、お産の時に、「赤ちゃんの処置をして下さる方は誰ですか?」と聞かれて、お母さん自身のお世話をする助産師や産科医師が「私らが一緒に診ますよ」と答えるのでは不足だし(だって母子ともに危ない状態ってのもあり得ますからね)、重ねて「赤ちゃんが仮死だったらその人は蘇生がきちんと出来ますか?」という質問をされるとしたら、看護師さんを一人増配するくらいでは信用されないだろう。
でもそういう時代になるのは必然だと思うのだ。分娩時事故で産科医が訴えられるたび、「世間ではお産が100%安全で当たり前だと思いこんでるのか」と、医療側はいらだち混じりにぼやいてる訳だし。ゼロでない確率で分娩時事故は起こるものだと世間に啓蒙するのなら、「そしたら先生のところで/私の分娩でその事故が起きるとしたらどういう対策が打てますか」という質問が返るのは当然のことだろうと思う。

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