新館への移転後、初めての当直である。
しかしこれほど楽で暇な当直は初めてだ。移転後で救急外来も新生児搬送も止めてある。既に入院中のこどもたちもみんな落ち着いている。全く呼ばれない。ときどきNICUに顔を出すが、しかし全く医師の仕事はなくて徒然無い。たぶん連休が明けて新館での診療を始めた途端に、いま休んでるツケが噴き上がってくるんだろうけれど、今それを考えて汲々としてても詮無いので、休める時には休むことにする。
でも本来、当直というのはこういうものであるはずなのだ。当直時間帯に救急外来をやるとか24時間営業でNICUをやるとか、そういう事をしたいならシフト制で勤務できる人数を寄せなければならんのだ。ちなみに厚生労働省の「労働」の側の人たちはそう仰るが、また仰るだけでなく医療界にも労働基準法による監督を強化なさっておられるようだが、しかし「厚生」の側の人たちには当直医師に時間外救急を担わせる現状を変える意思はあんまりなさそうである。半分に分かれて違うことを言うとはまるであしゅら男爵である。マジンガーZに退治して貰う必要がありそうだ。しかし兜甲児君も24時間呼び出し態勢でご活躍であったから私の思うような形に話が納まる保証はない。やれやれ。
NICUでは看護師長やナースたちが業務がてら色々と片づけものをしている。日常の細々としたことは大抵はナースがやるんだからナースのやりたいように片づけてればいいと思う。私が動きやすいように片づけたらたいがい不評を買うことになるし、そもそも私には片づけという類の作業が全くできないし。引っ越しの当日はそれでも何とかなったのですがね。引っ越し段ボール箱を片端から空にして分解するという、一種の構造化した作業を自らに課してたもので。しかし今日のように、いったんそれなりに納まるところに納まったかに見えるものをまた引っ張り出しては配置換えするような作業には、とうてい手が出ません。手が出せない人が口ばかり出すのも癪だろうと思って、遠巻きに眺めるだけにしてました。
新しい当直室は出入り口がNICUから丸見えである。呼んで何秒あるいは何分で出てくるか、NICUのナースに丸わかりである。それと周産期病棟をほぼ全室個室化して、手洗いを個室にも総室にも各部屋に付けたものだから、当直中に使える便所が遠い。善いことか悪いことか、新しい病棟にもいろいろ評価はあるけれど、しかし当面はこれで運用しなければならない。そういうものだ。
