全国138病院が分娩休止だそうだ

土曜朝から勤務に入り、土曜午前中の通常勤務、午後からの日直、夜間の当直を経て、日曜午前中の休日外来を済ませて帰宅。計28時間の拘束だった。拘束といえば今も自宅待機中だから、結局は明日の朝まで自由じゃないんだけれども。明日の朝にはまた出勤して通常の勤務。ビールの一本も飲もうかというのが可能になるのは早くても明日の夜。
まあ、けいれん重積2件連続は痛かったし、痙攣後の意識障害が回復するまでと思って入院して頂いたら成人患者さんから「うるさい」とクレームを頂いたりして悲しかったりもしたけれども、それでも一応それなりに睡眠もとれた。帰ったら妻が子どもたちを連れて図書館に行ったが、たぶんそれは「昼寝しておきなさい」という彼女なりの配慮なんだろうとも思った。
しかし、産科にせよ小児科にせよ病院に一人しかその専門科の医者が居ない、いわゆる「一人医長」の諸先生ならば、そのビールも飲めずに明日の夜も当直または自宅待機に入るのである。医者の激務ってのはそういうことである。そういう先生には無期限に、解放の日は来ない。とりあえず明日の朝までは起こされずにぐっすり眠ろうという、そういう日が来るのは退職の日である。
当直が明けて帰宅してから読んだ朝日新聞の朝刊には、分娩を取り扱う病院が全国で急激に減少していると報道されていた。

04年秋に産婦人科・産科を掲げていた全国の1665病院のうち、8.3%にあたる138カ所が4月末までに分娩(ぶんべん)の取り扱いをやめていることが、朝日新聞の全都道府県調査でわかった。深刻な医師不足を理由に、大学の医局が派遣している医師を引き揚げたり、地域の拠点病院に複数の医師を集める「集約化」を独自に進めたりしているのが主な理由とみられる。出産の場が急速に失われている実態が浮かび上がった。

出産の場が急速に失われてる、って、一人医長の産科とか二人しかいない産科とか、そもそも「出産の場」と呼んでいいもんですかね。うちも産科常勤は二人だけど無数の非常勤医に支えられてなんとかやってるって具合ですがね。難産で赤ちゃんもハイリスクってときには、とりあえず娩出後の赤ちゃんは新生児科が引き受けるから褥婦さんに集中してなさいよという態勢をとってますが、それでもやっぱり常勤二人じゃあ辛いだろうなと思います。大学からも車で数時間はかかる、非常勤医の手助けもままならない病院産科に一人医長でご勤務の先生で、しかも小児科はNICUを持ってない、そういう病院産科を、安心して出産できる場所とカウントするのは、現場からしてみると、なんだか思慮が足りないというか、おめでたいというか、奇跡に対する感謝とか謙虚さが足りないというか、色々と言いたい気分にはなりますね。
たぶん、「今まで分娩を取り扱うって言ってたけど実は無理だったんです。すみません」と誰かが謝ることが必要なんだろうと思う。誰が謝るのって聞かれても、適任者が誰だか分からないけど、その「謝るべき状況ではあるのに謝る立場として適当な人が誰もいない」っていう状況もまた、産科をはじめとした医療の崩壊に拍車をかける要因なんだろうと思う。「済まない。現状は私の責任だ。今後は私が立て直す」と、とりあえず我が身に引き受ける人が要るんじゃないかな。

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