当院は傾斜地に建っている。とくに旧館はもともとは旧財閥の別荘だったもので、相応に高いところにある。昭和初期にお抱え運転手つきの自家用車を運用できた人々向けの建物である。眺めは良いが徒歩で到達するのはかなり辛い(それとも昔の人はこの程度の坂は普通に登ってたのだろうか)。少なくとも、旧館まで歩いて登れた人なら、心臓にも肺にも足腰にもそれほどたいした病気はなかったはずだ。
敷地は表側が一番低く、奥へ向かうにつれ急勾配に高くなる。新館は最も表側の、敷地のいちばん低いところに建てられた。しかし旧館と渡り廊下で繋いだ際に、互いの階の呼称を強引にそろえたものだから、新館は地上3階地下3階の建物ということになり、新館の玄関は「地下2階」になってしまった。地下1階の外来には広々とした窓があり、大文字山麓の眺めがとてもよろしい。奇妙な感じはするのだが、たぶん、この近在に5階建ての建物を建ててはまずいとかいった、こどものおいしゃさんには分からない事情でもあるんだろう。
日: 2006年5月27日
なかなか満床にならない、と、スケールメリット実感中
NICU認可病床数が6床から9床になったら、なんだか入院を引き受けても引き受けてもなかなか満床にならない。片端から入院を引き受けても、次々と赤ちゃんたちは回復して保育器を出てしまい、回復室へ母児同室へと移ってゆく。6床だった頃は毎日の空床数にずいぶん敏感だったが、新館では二つ返事で引き受けている感じ。入院依頼の外線が入ったら、センターテーブルから周りをぐるっと見回して、あ、あの保育器あいてるじゃないか、あそこ行こう、てなもので。
医師数も増えたので、NICU入院中の赤ちゃんが増えても仕事の分担が増えたような気はしない。むしろ、当直明けでぼさっとしてたら自分の知らないうちに受け持ち患者さんの仕事が進んでいたりする。各々の患者さんにそれぞれの医師が気を配ってるので、診る目が二重三重になっている。私がくたびれている間も、誰かが私の患者さんを診ているということだ。安心でよろしい。年中無休24時間営業の集中治療室なんだからそれが当たり前のことなんだけれども、昔は私がくたびれた時点でNICUのスピードが全体に落ちてたもんだがねえ。遠い目になったりしている。