当院は傾斜地に建っている。とくに旧館はもともとは旧財閥の別荘だったもので、相応に高いところにある。昭和初期にお抱え運転手つきの自家用車を運用できた人々向けの建物である。眺めは良いが徒歩で到達するのはかなり辛い(それとも昔の人はこの程度の坂は普通に登ってたのだろうか)。少なくとも、旧館まで歩いて登れた人なら、心臓にも肺にも足腰にもそれほどたいした病気はなかったはずだ。
敷地は表側が一番低く、奥へ向かうにつれ急勾配に高くなる。新館は最も表側の、敷地のいちばん低いところに建てられた。しかし旧館と渡り廊下で繋いだ際に、互いの階の呼称を強引にそろえたものだから、新館は地上3階地下3階の建物ということになり、新館の玄関は「地下2階」になってしまった。地下1階の外来には広々とした窓があり、大文字山麓の眺めがとてもよろしい。奇妙な感じはするのだが、たぶん、この近在に5階建ての建物を建ててはまずいとかいった、こどものおいしゃさんには分からない事情でもあるんだろう。
