マンパワー

11日から日直・当直。そろそろ人も増えてきたことだし休日の日直と当直は分けられんかねとも思うがそれは部内で検討するとして。重症の子もそれなりに安定してきてたし頭痛がするしで11日の昼間は当直室で寝たり起きたりしていた。ばらばらと外来があって夜も呼ばれたが、深夜帯にほとんど外来受診がなかったのが楽だった。
12日朝はそのまま月曜の通常勤務。外来を始めようとしていると、突然部長から呼び出しがあって緊急帝王切開立ち会いに入れと言われる。怠け者の私は例によって、何でNICU担当も病棟処置担当も飛び越えて俺なんだよと反射的に思ったが、部長からの情報によるととんでもない急激な状況で秒単位の進行だから、誰が入るべきのなんのと御託を並べてる暇もない。直ちにNICUへ帰り、搬送用保育器をコンセントから切り離して手術室へ直行する。
腰椎麻酔もそこそこに帝王切開が開始される。お母さんだいぶ痛かったんじゃないかな。私も蘇生一式を準備する。帝王切開が決まってすぐにラジアントウォーマーも電源が入れられていたはずなのだが、処置台もじゅうぶん温まらぬうちに赤ちゃんが出てくる。速い速い。すぐに元気に産声を上げてくれた。良かった。気管内挿管は当然のこと、心マッサージも要るかもしれんと思っていたが、羊水を拭きあげるだけで済んだ。
多分に、この緊急帝王切開ができるかどうかが、この子の運命の分かれ目だったと思う。早剥だと思ったときに産科医に取れる選択肢がどれだけあるかということなのだが。どこの産科でも今回のように緊急帝切を決心してから10分20分での娩出ができるものなのかどうか、私はあまり他所での勤務経験がないからよく分からない。
そのままがさがさと外来を済ませ、午後はNICUに入る。若手が500gの超未熟児に動脈ラインと静脈ライン(経皮中心静脈)を1本ずつきれいに一発ずつで決める。動脈のほうは私でも入りそうだったが、静脈は私ではちょっと怪しいかと思っていたから彼女が決めてくれて良かった。PIカテーテルに付属の静脈穿刺針は先端のカットがエレガントでないので私は苦手。
この処置は私は補助に回る。処置の補助は最近になってやり始めた。昔は若手の育成なんて知った事じゃないとばかり、立ち会えるかぎりの処置は自分でやってきてたから。でも処置は補助に回ってはじめて見える事もある。動脈は助手側から見る方がよほどよく見えるし(強力な光源で手首を透かして見ると動脈がスジ状に浮き上がって見えます)。針の進路が皮一枚分ずれてるよなんてことも、かえって助手側からのほうがよく見える。他人ごと気分で傍目八目なのも多分に良い方に影響しているのだろうと思う。でも助手のやりやすさ・やりにくさというのも、主役が誰かによって多いに違う。初心者に近い人を指導しながら助手するってのは難しい。私のような非定型発達の人間にはさらに難しい。今回は若手がきっちり分かってる水準だったから補助の手も入れやすかった。そりゃまあ超未熟児なんだしそういう水準の人間にしか触らせないですけどね。
なんだかんだと遅くまで勤務。日曜朝から36時間。