用語規定では「尊厳死」とは何をさす語なのだろうか

厚生労働省は、終末期の治療方法を文書で前もって確認しておくことに診療報酬をつける方針なのだそうだ。そのニュースに接して、我ながらいささか単純直截な読書だよなと思いつつも「イェルサレムのアイヒマン」を再読した。
イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告
ハンナ アーレント / / みすず書房
ISBN : 4622020092
ホロコーストに関するナチの文書には、「絶滅」とか「殺害」とかいう不穏当な言葉は出てこないそうだ。一切の通信には厳重な「用語規定」が課せられていた。

殺害を意味するものと規定されていた暗号は<最終的解決>、<移動>Aussiedlung、および<特別処置>Sonderbehandlungだった。移送は<移住>Umsiedlung、および<東部における就労>Arbeitseinssatzとされたが・・・(同書67ページより引用)

<尊厳死>ってのは、用語規定的に、なにか別のもっと露骨な概念をさす語ではないんだろうねと念をおしておきたい。<終末期の治療方法>ってのも何かをさして言う用語じゃないんだよね。本人が望まなかった延命治療ってのは、本人が望まなかった劣等人種としての生なんぞといった下劣な概念と一線を画すものなんだよね。そこで一笑に付そうとしている君、君の着ているのは本当に白衣かい?確かめてみた方がよい。鍵十字のついた黒シャツじゃないことを。

この用語規定方式の懸値なしの効果は、それを使う連中に自分らのしていることを自覚させないことにあるのではなく、殺害や虚言について彼らが抱いている古い<正常な>知識によって自分のしていることを判断することを妨げることにあった。(同書p68)

最初のガス室は一九三九年に、「不治の病人には慈悲による死が与えられるべきである」というこの年に出されたヒットラーの布令を実施するために作られた。・・・中略・・・人目を偽り偽装するために注意深く考え出されたさまざまの<用語規定>のうち、<殺害>という言葉のかわりに<慈悲によって死なせる>という言葉が用いられているこのヒットラーの最初の戦時命令以上に、決定的な効果を殺し屋どものメンタリティに及ぼしたものは一つもない。(p86-87)

引用ばかりの記事になってしまった。何だかうまくまとまらない。場末のNICUに勤務する身では「尊厳死」なんていう大層なお言葉を拝聴することはめったにない。そもそも、医師としてご縁を頂いた方々(赤ちゃんも、むろん含む)の死に関して、私は尊厳があったのなかったのと申し上げる立場にはない。
以下の情報源に深謝。
終末期の治療法、意思確認に診療報酬 – What’s ALS for me ?
これが人間か──終末期の治療法、意思確認に診療報酬 – モジモジ君の日記。みたいな。

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