なにさま、日本経済がそんなに悪いんならなんで円が売れるんだ?という混ぜっ返しがよく耳に入るのだが、それって、吉原に長逗留して放蕩する若旦那が、俺が駄目なやつならなんでみんながこんなにちやほやしてくれるんだ?と言ってるようなもので、そりゃあ勘違いでしょうよと。おだてられてむしられているだけだよと。そういうものではないのだろうか。
日: 2010年10月28日
この著者の言うことならまずは聞いてみようと思った

- 作者: 小黒一正
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/08/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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1冊1000円もしない本にてんこもりに専門的な概念が詰め込まれていている。しかし決して衒学的ではなく、読んでいると著者がまっすぐ私の顔をみて語っているような気になる。言う内容は難しいがこの人の言うことならとりあえず耳を傾ける価値があると思った。
著者は1974年生まれで、だいたい私の弟妹世代なのだが、そういう若い世代なら、財政難や世代間格差の不利益を自ら被る立場にある。いい加減なことを言っては専門家としての信用を失うばかりか、生活者としても身銭を切って責任をとる羽目になる。そういう当事者感も感じられるように思った。
それにしても内容はやはり難解なのだが。まあ、財政再建やら経済立て直しやら世代間格差の是正やら、そう簡単なお話でもないだろう。適切な難解さだと思う。難しい問題は、せめて難しい問題なのだというコンセンサスだけは得ておかないと、どんどんポピュリズムに堕していく。