マルサスの罠という概念を初めて読んだ。何とはなく、今の日本の医療もそうだなと思った。

- 作者: グレゴリー・クラーク,久保恵美子
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まっすぐな道でさみしい
マルサスの罠という概念を初めて読んだ。何とはなく、今の日本の医療もそうだなと思った。
昨日は午後週休の後で当直。へんな日程だが、ときには融通の利かないこともある。
当直はただ泊まっていただけだった。勉強をして読書もして、十分睡眠もとった。わずかな入院中の子たちはみな落ち着いていて、その日のぶんの成長を着実にこなしている。
入院がないかなと心待ちにする気持ちも正直あるが、それは誰かのトラブルを心待ちにすると言うことだから上品な態度ではない。あまり強くは願わないようにしたい。そのうえで、もし需要があればまず当院にお声がかかるといいなとは思う。
ほんらい現状が正しい競争のありかたなのかもしれない。これまでは各施設の空き病床を探して空いてるところに入って頂くという形になっていて、紹介元による選択の余地がなかった。
それは限られたリソースを配給するというあり方であって、選択権が配給側にあった。供給側が十分なリソースを提供できていて選択権は受給側にあるという、一般的なサービス業のあり方ではなかった。そもそも配給と供給は違う。その違いゆえに一般的には医療はサービス業たり得ないのだが。
この状況がいつまで続くか分からない。たぶん無期限には続かない。人件費に始まる経済的な費用は日々刻々と必要だし、また診療経験を積み重ねることでしか身につかないスキルもまた、これまでの蓄積が暇な日々のうちに取り崩されていく。経営を考えればどこかで規模の縮小を上層部から打診されることだろうし、医師も看護師もとくに若手は症例の豊富な施設に出してやらないと今後のキャリアにも響くだろう。
どの時点で縮小に転じるべきか、その趨勢を見極めるのにはまだ時間がほしい。いったんNICUを閉じてしまったら、その時点で伝統は雲散霧消する。こういう組織的な仕事には休眠はあり得ない。はっきりとそれは死であって、また必要が生じたからよみがえってくれとと言われてもそうそう簡単なお話ではない。
まあ、不安を感じるのは現状では私ら当事者だけでよいです。当地の皆様には、いま京都では超低出生体重児の入院先も豊富に供給されているんだなと、安堵しておいて頂ければよいと思います。