私はドジ踏まなくて済んでよかったけれども

 徹夜で昨日入院の二人を診る。午前5時頃救急外来に呼ばれて、こんな時に何だよと腹立ち半分に即刻入院を決めてしまった。無用の入院をさせたわけではなく、客観的に診ても重症の、生後半年に満たない乳児の喉頭炎でかなり呼吸が苦しそうにしていた。疲れた頭で半端診察して帰宅を命じるようなドジを踏まなくてよかったと後になって思った。
 ドジを踏むと言えば京大病院でリウマチの薬を研修医が誤処方して患者さんが亡くなったと報道されていた。院長先生が謝罪会見をされておられたが、移植外科の華々しい業績もまるでイチローの活躍みたいにニュースとして新味が無くなってしまって、移植外科教授のこの先生が晴れやかな顔をしてテレビに出られるお姿を最近とんと拝見しない。
 でも全国を見渡したらこの誤処方は何回目だよと思う。同じような誤処方で亡くなった人が過去にも報道されてたように記憶しているが。人が死ぬミスの内容としては陳腐すぎるような気がする。どうして薬局は研修医の言うがままほいほいと調剤するかね?そもそも処方出来るってことからして信じられないような気がする。病棟の端末からのコンピュータ入力処方にしてあるのなら、せめて明らかで重大な処方の誤りにはコンピュータが自動的に警報を出すくらいの安全策はとっても良いと思う。シマンテック社がウイルスパターンを日々配信してくるように「最新のミス処方パターン」のデータベースを日々更新しておければ最高だが。そういうセーフティネットをかいくぐって危険な調剤がそのまんま病棟に届いちゃったとしてもさ、病棟薬剤師は何をしとるのかね。その処方を患者さんに内服して頂くときにどういう説明をしたのかね。指導医は研修医が書いたカルテを読んでなかったのかね。
この研修医は気の毒に随分と辛い立場に立たされて居るんだろうけど、あのバカがとこの研修医一人だけを責め立てるようなことがあったら京大病院の危機管理能力も高が知れたってことになる。この研修医を全面的に責める権利があるのは研修医本人だけだと思う。御遺族からの責めは京大病院が病院としてお受けするべきだと思う。私は卒業以来大学病院で働いたことのない医者だから内部の雰囲気はよく分からないけれど、自分には責任がないと独り決めしてこの研修医を責め立てるような知性のない奴が母校の病院には居ないことを祈るのみである。