いまさらブラインドタッチとか誰か自慢する?

 紙カルテを電子カルテに切り換えた直後には、看護師の大半が両手の人差し指だけをつかったキー入力をしていた。今ではブラインドタッチでの入力ができないスタッフはいなくなった。みんな当たり前にできることになってしまって、ブラインドタッチという言葉すら、とんと聞かなくなった。

 私がブラインドタッチを憶えたのは大学の頃で、教則本を1冊買ってきて2週間ほど練習した。今の若い人はたぶんそんな労力は使っていないと思う。特別に練習をしなくともネットで遊んだり電子カルテに記載したりしているうちに自然に覚えるのではないだろうか。

 外国語もそんなものかもしれない。今のところ、日本語以外の言葉をつかうのは特殊技能と扱われているけれど、その特殊さの度合いがしだいに減りつつある。そのうち、俺って英語できるんだぜって言っても、俺ってブラインドタッチで入力できるんだぜという程度のありがたみしかなくなるのだろう。

 それはみんなが外国語の習得に努力を重ねたためというばかりではなく、ある水準までなら外国語もブラインドタッチも習得はそれほど難しくないし、その水準でもけっこう使えるものだということが、露見してきたためではないかと思う。ブラインドタッチは難しいものだと主張して教則本を書いていた人らのお世話にならなくとも入力作業をさらさらこなす人たちが多くなったように、今後は、外国語は難しいものだという先入観を飯のタネにしてきた人たちの頭越しに、みんな外国語を読み書き話すようになるのだろうと思う。