大人と子ども

内田先生の書より引用。

「誰かが、自分には解けない問いの答えを知っている」と考えること、実はこれが「子ども」の定義なのだ。そして、「子ども」が「答えを知っていると想定している人」のこと、これを「大人」と呼ぶのだ。「子ども」と「大人」の定義は尽きるところこれだけだ。

医療を語るときに、その発信者が提供側であれ利用側であれ、また自分であれ他人であれ、自分らがこんなに大変なのは誰かが責任を果たしていないからだ云々の言説を目にするたび、その言説を発した人間に幼さを感じずにはいられないわけだが、内田先生のこの言葉がその感じの依って立つところを明確に語ってくれているように思う。
利用側あるいは供給側でも経験の浅い人ならともかく、私のように臨床に10年の上から居て、まだ分かってないとしたらナイーブに過ぎる。現在私らが小児救急や新生児やで必要以上に汲々とさせられている原因の解決策を知ってる「偉い人」など居はしないのだ。いったい誰のことを、この窮状の解決策を「知っていると想定」できるというのか?君の教授や、院長や小児科部長や、そういった偉いさんたちが本当にこの窮状を解決できると本気で思えるか?京都府庁や府議会に京都府下の小児医療に責任を取る立場の人間が居るか?厚生労働省まであるいは財務省や国会内閣まで話を広げたところで、この窮状を解決できなければ職務上の責任を問われるという立場の人間が誰か居るのか?
いい加減に身に染みて分からなければならない。この窮状を解決してくれる誰かがどこかに居ると思っている限り、俺も君も「子ども」だということを。誰か他の人間が解決してくれると語ることは、自分が子どもであると公言しているに他ならないということを。他責的な言説を弄して当然という顔をすればするほどに、同時に自分の「子ども」ぶりをより強く世間に曝しているのだということを。

分かってくれとは言わないがそんなに俺が悪いのか?

前回で引用した記事から、さらに引用。

 年間の死亡率を10万人当たりで見ると、日本の1〜4歳児は33.0人で、ほかの13カ国平均より3割多く、米国(34.7人)の次に高い。米国は他殺(2.44人)の占める割合が大きく、この分を除くと、日本が最悪になる。最も低いスウェーデンは14.3人。
 病気別には、先天奇形や肺炎、心疾患、インフルエンザ、敗血症などが13カ国平均に比べ高い。不慮の事故は、平均とほとんど変わらなかった。
 ほかの年齢層の死亡率は、すべての層で13カ国平均より低く、全体では10万人当たり783人で、13カ国平均より15%低い。0歳児については340人で、13カ国平均の約3分の2で、スウェーデン(337人)に次いで低い。新生児医療の整備が大きいとされる。

むろん詳細はこの研究班の研究結果が出ないと分からない。田中哲郎先生は小児医療体制の構築について以前から詳細な研究をなさっておられる方で、そうそう無責任だったり杜撰だったりする研究成果を発表なさることはない。私のスタンスは、こういう速報ではなくて正式発表を持して待つというもの。
そうとは言えこの報道で動揺したのは事実だし、他にも動揺なさった皆様が周辺の小児科医を軽蔑し始めたりなさると辛い。無い知恵をしぼってみた。
上記引用で、1〜4才の死亡率が十万人あたり33人、これが諸外国より3割多いとするとだいたい諸外国と言うのは25人という検討なのだろう。25人の3割増だとだいたい7.5人増で33人程度になるよね。で、この増加分7〜8人が0歳のときに亡くなったとしてみよう。そしたら日本の0歳での死亡率は347人だ。いや、1から4歳までの4年間だから4倍増で340プラス(7かける4)で368人か。年齢別の人口にそれほど大きな変動が無いとしてだけどね。なんぼ少子化の御時世でも0歳1歳2歳っていう小刻みなレベルでは人口はそうそう変わらないだろう。実際の10万あたり340人という数字が比較対象国の3分の2ってことは諸外国は十万人あたり500人あまりは亡くなってる計算かな。0才児では368対500以上。人口の変動そのほかの要素をみこんだとしても、まだまだ日本の方が優位に見えるが。
むろんこういう報道をきっかけに小児医療の拡充に拍車がかかるのは喜ばしいことだ。ついでにスウェーデン並みの福祉国家になれたらとも思う。でもまあ情報操作すれすれのことをして目標を達成しようとしても、ばれた時点で前より悪い位置に逆戻りすることになるから、あざといことはあまりしないほうがよいとも思っている。で、こういう試算もしてみましたということで、ご一興までに。

日本の1〜4歳児の死亡率 先進国の3割増で「最悪」

日本の1〜4歳児の死亡率 先進国の3割増で「最悪」

2005年05月31日11時41分
 長寿命を誇る日本だが、1〜4歳児の死亡率は先進国の平均より3割高く、実質的に「最悪」なことが厚生労働省の研究班の調査でわかった。原因ははっきりしないが、主任研究者の田中哲郎・国立保健医療科学院生涯保健部長は「小児救急体制が十分に機能していないのかもしれない。医師の教育研修なども含め、幼児を救う医療を強化する必要がある」と指摘する。

うあああああああああああああああ
ブログなんて書いてる場合か?とひっぱたかれたような気分だ。1〜4歳というとNICUのマイナスとかゼロ歳とかの面々は対象外で、この年代はけっこう良い成績を上げてるはずなんだが、ってのは言い訳かいな。でも他国では0歳で亡くなってるような生来重篤な子どもたちが日本では0歳を生き延びるけれど幼児期に亡くなる子が多いってことはないのかな。この研究班の成果はどこで発表になるんだろう。今後注目するつもり。