午前中は自院で小児科一般外来。昼で切り上げて、さて大学へ行くかと思っていたら、自院NICUの若手からお呼びがかかった。NICUの赤ちゃんがひとり予想外に悪化しているとのこと。電話を聞いてみたら、自分が何をするべきかは彼自身も分かっているように感じられた。背中を押してやるだけだなと思った。
NICUに行ってみたら、若手ら3人があれこれと話し合って、仕事を分担して、この子の処置を着々と進めていた。私はうしろでそれを眺めながら、うちのNICUも世代が変わりつつあるなと思った。嬉しいことだ。
ラスト1チャンスの血管確保をする段になって、若手が躊躇していたので代わった。自信がないとかで躊躇すると、針先のスピードが鈍る。のろい針からは血管が逃げる。覚悟の決まらない血管確保は成功率が有意に低い。
しかし若手の成長のためを考えると、こういうときに代わるべきなんだろうかとは、いつも思う。血管確保は基本的な処置だが、基本の常で奥の深さは限りない。駆け出し指導者としての私には、自分がやるならともかく、後進がやるときの成功率を読むのはかなり難しい。処置はやらなきゃ上達しないが、できそうにもない難易度に手を出したところで自信をなくすばかりで身にはつかない。なにより処置は成功してこそ痛い目を見る赤ちゃんに申し訳が立つんだけど、痛かった失敗したではどうにもよろしくない。できるできないの境界の、できる側にわずかに寄ったあたりの難易度を各人に見切ってやらせていくのがいいんだろうけれども、そんな達人の領域には私はあと20年ほどは到達できそうにない。