昨日の迎え搬送は、いちおうNICUを名乗っているうちとしては軽症の部類にはいる子だった。若手が連れ帰ってきて初期処置をすませたところで帰宅。全行程2時間。ほぼ純粋なお留守番/バックアップ。日付が変わる前後に帰宅。
むしろこの程度の子を自施設で診れなくなったのかと、搬送依頼元のご事情のほうが気がかりになっている。私が大学を卒業する頃には、大学病院よりもよほど充実した研修ができると謳って下宿まで就職の勧誘に来たような病院だったのだが。この病院の特殊事情で新生児はアウトソーシングということになったのか、それともこの決して小さいとは言えない規模の病院でも新生児を診ることが困難になってきたのか。もしも後者だとするならば、私の今までの認識以上に、京都の新生児医療は地盤沈下が進んでいると考えざるを得ない。
今日は9時から出勤して日直・当直。中1日の当直は私だけではなく、昨日当直だった若手は今日を休んで明日も当直である。もともとのシフトでは彼に本日のバックアップを頼むはずだったのだが、女医さんがなんとか都合をつけて本日一日だけのバックアップが可能にしてくださったので、若手を業務命令から解放して休ませることが可能になった。当直のできないご事情の先生にも、こうしてできる限りでシフトに参加していただくとたいへん有り難い。私も昔はそれっぱかししか参加できないのかとこういう女医さんを批判的に見ていたのだが、いざ自分がシフトを組む立場になると、自分のできる限りの参加をしてくださることの有り難さが身にしみる。
空床はちょっと詰まってきたので1/1にしました。
投稿者: yamakaw
-
ゆっくりと新生児医療の地盤が沈む
-
やっぱり呼ばれた
当直中一日の今夜に呼ばれたら辛いなと思っていたがやっぱり呼び出されてしまった。迎え搬送のおるすばんだから、うまくすれば病院にいるだけで済むのだが。
今日は帰宅後ケーブルテレビのヒストリーチャンネルでやっていた鉄道ものの短編映画を2本観て、それから「パーフェクト ストーム」を他チャンネルで途中から観た。これ映画館の大画面で観たらすごかっただろうなと思った。アメリカの映画にしてはリアリスティックな結末だよねと思ったら監督がウォルフガング・ペーゼンだった。終わり方のテイストが「Uボート」と似ている。
それからしばらく寝て、夕食を食べて、新しく買ったシャチのDVDを娘と観ていたら携帯電話が鳴った。”Stand by me”なのでNICUからだ。NICUからの着信音に指定してからこっち、この曲を聴くのがちょっと気が重くなった。好きな歌だったのだけれど。 -
まず1日目の当直が明けた
午前2時から7時まで寝られて、なんとか1日目は無事に明けた。これなら今日休めれば明日の日直当直から明後日の午前中まではまあ、保つだろう。
月9回の当直とそれに匹敵する回数の自宅待機、休日も今月私が自宅で朝から晩まで過ごせる日は10月12日の1日きりである。こういうはっきりと労働基準法のルール違反な勤務を、私らは自分たちのほうからお上にお願い申し上げてお許しあるいはお目こぼしを頂いているんだ。お上にしてみれば私らに貸しをつくってるつもりなんだろうなと思う。法的には白い手のままで、お上は俺たちの息の根を止めることが簡単にできるんだ。
とうてい遵守できない規則をまず作って、それを守れない現場に対してお目こぼしをすることで、それを貸しにすることで現場よりも優位に立つという行政。現場はルール違反の負い目と、いつ「規則通り」の取り締まりで潰されるか分らないという恐怖とで、例えばこうして小さなブログに書き留める勇気すら削がれている。
何やってるんだろう俺たちは。
空床は2/2です。でも今日重症入院で呼ばれたりして徹夜したらもう明日はアウトだな。まあ、呼ばれる前になるだけ寝だめていよう。 -
中1日3連の当直をする
本日当直入り。明日は当直明けに土曜午前の外来をして帰宅、自宅待機。日曜は朝から日直・当直。月曜は明けで午前中の一般外来。午後は週休でお休み。火曜は朝からNICU担当して当直入り。水曜は朝から外来して午後5時で勤務終わり。
自分で組んだシフトではあるし、他には人がいないんで誰が組んでも必然的に数学的にこのような組み合わせしかあり得ないし、たぶんこの週末週明けを乗り切るにはこれが私にとっていちばん楽なシフトなんだろうと思っている。
たぶん私が死なないで済んでるのは当地のみなさまのご厚情のおかげだと思う。さいきん医療現場の疲弊が世に知れるにつれて、夜間の時間外外来受診がめっきり少なくなった。私のような虚弱な医師でもこのシフトでやっていけるのは寝られる当直だからだ。これで夜通し外来に張り付くような当直だったらたぶん潰れる。
もともと当地で小児科受診の親御さんは、夜間の受診でもはじめには夜分畏れ入りますとひとこと仰ってくださるし、終わったらありがとうございましたと仰ってくださる。ご自分のみならず、乳児はともかくもものを言える年代の子どもがだまって診察室を出ようとしたら、何か言うことがあるんじゃないかと子どもをたしなめる親御さんばかりである。そういう親子だと同じ起こされるにしてもずいぶんと疲れ具合が違う。そういう「客層」に恵まれてありがたいと思っていたら、疲弊が世に知れるにつれて潮が引くように夜間受診が減ってきた。なお有り難いことである。
これは他所を知らないから邪推かもしれないが、たとえば他家の子が診察中でもかまわず診察室のドアを蹴破って乱入してきて早く自分の子を診ろと乱暴な言葉で強要するような風潮がある地域の病院なら、現場の疲弊もどこ吹く風で、まったく夜間受診は減ってないんじゃないかと思う。むしろそんな人ばっかりが夜間に凝縮されてくるんじゃないかとさえ思う。ますますスタッフの疲弊は進むに違いない。当地がそういう土地だったとしたら、今回のようなシフトはとうてい耐えられないだろうと思う。
NICU空床は2床。重症でも可。もとよりそれが本分ですし。 -
自転車を待っている
発注した自転車が到着するのをじっと待っている。
夏の終わりに急に自転車がほしくなった。たぶんそれは北大路ビブレのL.L.BeanでSchwinn社のマウンテンバイクが3万8千円で売ってあったのを見てしまったせいだと思う。なんで自転車ごときにそんな目を奪われるかねと自分で不思議になるくらいに、ショーウインドウのガラス越しにぐりぐりと店に引きずり込まれてしまった。その日はたまたまあの近所の病院にBLSの講習を受けに行って、久々に成人モデル人形相手に心肺蘇生実習を一日やって「身体を動かすのもいいもんだなあ」みたいな爽快な汗をかいていた影響もあると思うけど。その場で購入して乗って帰ろうかと思ったわけだが幸か不幸か持ち合わせがなく、それにだいたいそういう衝動買いで失敗するのがこれまでの常ではあったし、そのときはSchwinnがそんな一流メーカーだったなんて知らなかったということもあって・・・まあそりゃあL.L.Beanがそんな変なメーカーの自転車を自分の店舗で売ることはないでしょうよとは思ったんだけれどもね。まあ、買わずに帰ってきた。
でも何だか自転車って良いよねと思った。今の生活は月9回(ちょっと増えた)の当直とほぼ同じ回数の自宅待機。月の3分の2あまりは病院とその町内にある自宅に縛られた生活をしているわけだが、しかも当直でも自宅待機でもない日はたいがい当直あけだから自分の体力では寝ているしかない日であるわけだが。このまま定年か過労死かでリタイヤするまでこんな軟禁生活を続けるのかなあと思うとなんだか切ない気分ではあった。ネットで世界のあちこちを見た気分になるのもいい加減飽きたし。しかしそういう自分の体力でも病院までの坂道を漕ぎあがれるような軽い自転車があればせめて町外へ出るくらいはもうすこし自由にできるんじゃないかと思ったら、がぜん自転車というのが光り輝く選択肢に感じられてきた。ちなみにママチャリという種類の自転車は持ってはいたが、私の体力では漕いであがるのは無理。いつのまにやらガレージで錆びてた。
私の行動パターンとしては何にはまるにもまずは参考文献を集めるというもので、あれこれと自転車の資料を読んでの結果として、奮発して重量の軽いスポーツバイクを買うしかないと思った。10kg内外のクロスバイクなら俺の足でも病院直行が可能なんじゃないか、とか。あるいはそれでも病院までの坂をのぼれないようなら、のぼれるくらいに鍛えておかないとリタイヤが定年ではなくて本当に過労死になるよとか。で、サイクルベースあさひ高野店に錆びたママチャリの始末がてら出向いて、GIANT社のESCAPE R3というのが目にとまった。姿かたちはともかくも命名がよい。私の目的を体現したような名前じゃないか。ESCAPE。エスケープ。でも店に置いてあったESCAPEはサイズが小さかった。試しに乗せてもらったら膝がハンドルに引っかかるような気がする。もう一つ大きいサイズをといったら、ちょうど端境期ですから2009年版が入るまで待って下さいという。いつになると聞いたら10月下旬だそうだ。まあいいかちょうど誕生日もそれくらいだしということで、じっと待っている。待つ間にいろいろと自転車の本を買って読むから待つのも費用がかかる。本代をあわせたらR2が買えたんじゃないかとも思うけど。その点は我ながらちょっと愚かかも。 -
就労体験の成果として一人で新幹線に乗る
息子は夏休み前に中学校の授業の一環で数日間の勤労体験に出た。以来、ナスを見ると「上向き3個・下向き2個、トゲに気をつけて」と言うようになった。そういう注意を受けながらナスの袋詰めでもやっていたものとみえる。わりと真面目にやったらしくて受け入れ先にも好評だったと聞く。これなら福祉就労ではなくて一般就労を目指すと宜しい、とかご意見を頂いて親としても嬉しかった。まあ、そういう業界用語を使ってご講評いただけるような受け入れ先だったのだなとは思った。全く自閉症なんて知らないよというような受け入れ先でしっかり仕事をして好評を頂いたというのが理想なんだろうけれどもね。それはさすがに贅沢ですね。
その数日間は市バスで「通勤」していた。自宅からバス停数個の近距離なのだが、彼が一人で公共交通機関に乗るのは初めてのことなので、それもよい勉強になった。本人もすっかり自信をつけたらしく、夏休みには一人で新幹線に乗って長崎へ行くんだと言い出した。娘は受験があるので今夏は京都に居残りだから、今夏の帰省では息子を一人で動かさねばならない。妻はためらったようだが、彼が冒険心を起こすなど滅多にないことでよい機会だと思って、行け行けと私が背中を押した。内心は不安であったが、たぶんこういうときに思い切るのが父親の役割なんだろうと思った。
こうなってみると京都から長崎まで直通の寝台特急「あかつき」が廃止になったのが残念ではある。新幹線だとどうしても博多で乗り換えである。やらせればたぶん息子はうまく乗り換えるんだろうと思う。物事が絶対的に予定通りに進行すると仮定するなら、彼には平均的な定型発達の中学生よりも信頼が置けるかも知れない。しかし突発的な予想外の事態への対応、たとえばうっかり乗り換え損ねたとかダイヤが乱れたとかのときのリカバリーが上手くいくかは極めてあやしい。見知らぬ土地でパニックを起こされたらと思うと、その先は想像もしたくない。
そこで行きは義弟に頼んで義弟の車とフェリーで移動することになった。京都への帰路で、博多まで祖母に付き添われて出てきて、新大阪どまりの新幹線に乗せ、新大阪で母親が待つという段取りになった。京都まで新幹線ということになると、うっかり乗り過ごしたときに名古屋以遠まで持っていかれてしまう。捜索範囲が名古屋・横浜・東京と広がるのはどうにも安心できない。いちおう車掌さんにもそういう子が乗っていると耳に入れてはいたのだが、それでもね。
実際には新神戸あたりから携帯で母親に連絡してきたりして、予想外にしっかりしたものだった(ちゃんとデッキに出たかどうかまでは分らない:隣席のどなたかご迷惑を掛けていたらすみません)。今回の成功で自分でもさらに自信を付けたらしくて、今でもテレビに新幹線が出ると「一人で乗ったね」とか言う。まあ一人で乗ったには違いない。どれだけ周囲を入念に固められていたかはとんと気に掛けていないようだが。まあ中学生なんだからそうやって一人でやった気分に浸るのもけっして悪くないと思う。しかし一方で、一人でやれると言ってもどれだけ周囲のお世話になっているものなのか、もう少し大人になってからでいいから気がついてほしいものだと、親としては思う。確かに彼は自閉症なのだが、それでもやっぱり、感謝ということを知らないでは、幸せな人生とは言えないと思うので。 -
菌マスコットけっきょく付けてみました
昨日の記事を書いたあと、聴診器のアクセサリーを物色してみたんだがと妻に話したところ、好きなのを選べと、菌マスコットを5~6個出してきました。いったいこの人は何にお金を使ってるんだろうと思ってしまいました。

聴診器につけてみました。
笑っているほうがA・オリゼー Aspergillus oryzae。日本の代表的な麹。日本酒や味噌や醤油の生産に活躍します。
ムスッとしているのはL・ヨグルティ Lactobacillus yogurti。乳酸菌でヨーグルトを作るんだそうです。
コウジカビと乳酸菌が同じ大きさなわけないだろうという突っ込みは原作でも「なし」になっています。
ちなみに二つ組みでつけないと抜け落ちてしまいます。 -
フィギュア王 聴診器に菌のマスコットはまずいでしょうね
フィギュア王 No.128 (ワールド・ムック 745) もやしもん 秋の菌祭り
/ ワールドフォトプレス
ISBN : 484652745X
愛読している「もやしもん」の特集であったとのことで、妻が買ってきた。こういう世界もあるのかと興味深く拝読した。
もやしもん特集は各種の菌のフィギュアを並べてあった。聴診器のマスコットにどうだろうと思って物色したが、いまひとつピンとこなかった。というか、やっぱ菌のマスコットを聴診器につけてるのってまずいでしょうよ。ときにかわいらしい人形などつけておられる先生があるが、ああいうものはどこから手に入るんだろう。
アスペルギルスって要するにコウジカビなんだねというのは「もやしもん」を読んで初めて知ったことである。
少女のフィギュアの写真もたくさん掲載されていた。近年芸術的価値が世に認められつつあると聞いてはいたが、なるほど妖しく美しいものだと思った。
色々と訳のわからない商品も掲載されていた。1体2万円のジャギのフィギュアなんて誰が買うんだろう。頭をすげ替えたらアミバにもなるというトキのフィギュアに至っては原作をリスペクトしてるんだか小馬鹿にしてるんだかわからない。 -
後ろー!後ろー!!
中山成彬という人が陳腐な題材の失言を三連発して国交相を辞任した。題材に新味がなくても三連発で威力があった。ゴルゴ13で読んだ突撃銃の進化に、トリガー1回で3発の弾が出ますというのがあったが、やっぱり失言も進化して攻撃力を増すんだろう。
当直室でつけたテレビニュースにちょうど出たのだが、地元の県連の会長さんにちょっとは慎めと言われたその直後にまたも日教組云々と繰り返したこの人の芸風は、むかし客席のよいこのおともだちの「後ろ、後ろー!!」という絶叫にまったく耳を貸さなかった志村けんを彷彿とさせた。
こういう失言というのは意図してやるんだろうか、それともうっかりやるものなんだろうか。システム的な考慮が必要なヒューマンエラーなんだろうか。それとも、何かほかの重大なことから目をそらすなど隠された目的のことなんだろうか。あるいは、堅い仕事をじっくり勤め上げてきた初老の男性がとつぜん近所の大型ショッピングセンターで安物の鍋を万引きして捕まるという類のお話なんだろうか。
空床はゼロですが戦後教育のせいではありません。 -
「ハックルベリー・フィンの冒険」と裁判員制度のこと
ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)
マーク トウェイン / / 岩波書店
ISBN : 4003231155
ハックルベリー・フィンの冒険 下 岩波文庫 赤 311-6
マーク トウェイン / / 岩波書店
ISBN : 4003231163
スコア選択:
子どもの頃からわりと読書は好きだったつもりだが、なにか読む気がしなくてハックルベリー・フィンのほうはしまいまで読んでいなかった。改めて読んでみたわけだが、いやこれは子どもの物語ではないですね。
物語の中で、ミシシッピー川の流域を渡り歩いていた詐欺師がついにその悪事が露見して、住民にリンチにされる場面がある。町じゅうの人が熱狂して、悪党二人の身体にタールを塗って鳥の羽根を突き刺し、ミシシッピー川へ放り込むべく担ぎ出してゆく。
英語のlynchという動詞は、単に法律にもとづかない制裁を加えるというのみならず、最後に殺してしまうというところまで含んだ語だと聞くので、この情景もじっさいにあり得た情景なのだろうと思う。
で、ここから先は私が勝手に思ったこと。彼の国の陪審制度というのは、けっして既存の裁判制度に住民参加を促すために成立したものではなく、実際のところはこういう熱狂的な暴徒と化しやすい住民を裁判制度から閉め出すために成立した制度なのではないかと、物語を読んで思った。何人までなら法廷に立ち会わせるからそれで納得して被告人を殺さず司法に引き渡してくれということで。
大野病院事件では控訴しなかったなあと、締め切りの日を迎えて安堵。
今日も二人の入院があったがそれでも空床は重症2/軽症2。
