今どき・・・と呆れられるかも知れませんが、つい最近まで無鎮痛無麻酔で行ってました。施設によっては手術室に移動して全身麻酔で行うNICUもあるようですが、私らの病院には常勤の麻酔科医も居ないし眼科診はだいたい準夜帯に行われるしで、あまり実際的ではありません。
最近、凝固術の時にはフェンタネストを用いて鎮痛なりと図るようにしました。やってみて、赤ちゃんがほとんど泣かないのに驚きました。レーザー凝固術は成人でもけっこう痛いものだと聞きますし、赤ちゃんは泣き喚いて当然だと思っていました。泣き喚くほど痛いことなのだから鎮痛くらいちゃんとしてやれと、お叱りを受けて当然のことですが、これを泣かなくするほど深く鎮痛してしまったら呼吸循環も不安定になるのではないかとの心配もあって、あえて我慢するのだと思っていました。眼科診をきっかけに脳室周囲白質軟化症を発症したなどと都市伝説じみた症例報告が時折上がってくることもありまして。
しかし、モルヒネの数百倍といわれる鎮痛効果を持つこのフェンタネストという薬を用いると、ほとんど呼吸循環の抑制はなく、しかも泣かさずに凝固術が可能です。泣かず暴れずなので眼科医としても手技が容易になっているようです。迅速に終わられます。
以前は新生児の開腹術すら無麻酔で行っていた由です。新生児は痛みを感じないという「学説」がまことしやかに流布していたとのこと。さすがにこれは噴飯ものだと私は思いますけどね。でも、いざ網膜症凝固術を泣かずにできるという事実を目の当たりにすると、今まで随分とたくさんの赤ちゃんたちを泣かせてきたものだと、己の不明を恥じます。
私らの職種にも問題があるのかも知れません。NICU医師は小児科医であって麻酔科医ではありません。対して、成人の一般的なICUに勤務する医師は麻酔・集中治療医であって、一般内科医の特殊部門とは趣が異なります。NICU医師はICU医師に比べて麻酔や鎮痛・鎮静に関するトレーニングの度合いが構造的に若干低いのではないかと思えます。痛い恐いは当たり前だから若干泣くのは当然として、いかに迅速に処置を終え苦痛を必要最小限に抑えるかが小児科医の腕前だとされてきました。静脈の穿刺部位に局所麻酔薬のパッチを貼っておくとかといった発想は伝統的な小児科医の発想ではありません。
最近、NICUでも、採血の2分前に砂糖水を赤ちゃんの口に含ませると泣きが少なくなるという研究成果が出始めていたりして、ようやく鎮痛を積極的に行おうという気運が高まっているように思います・・・あるいは私が知らなかっただけでしょうか。よそのNICUではごく当然のことになってたりして。世の中の進歩は速いですからね。
「人生は勉強だな」 ・・機関車ゴードンの言でした。

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