従うしかないのか

文句を言うなと言われてもに対して頂いたコメントへの返事です。長いので投稿にしました。


従うしかない、とoctさんに思わせてしまうところが不妊治療の難点ではないかと思います。不妊治療医の説明不足の結果生じた視野狭窄的な思いこみのような気がしてなりません。
たとえばの話、開始時期をこの時期までずらせて頂いたらこの程度安全が向上しますよ、との説明があったうえで(そもそもそんな関係があることが科学的に立証された上でですよ)、時期調整という選択肢もあると示されたらば、たとえば3ヶ月でも資金を貯金してじっと待つというのは考慮の余地のないことでしょうか。
私はこれは選択の余地がある話ではないかと、勝手ながら思っているのですが。
どれくらい待てるかという負担と、それでどれくらい安全になるかとの関係の予測は、医療供給の側で分析してご説明することだと思います。負担のコストパフォーマンスの分析とでも申しましょうか。その土地に特有の事情というのも色々ありますので(NICUの空き状況なんてその典型だと思います)、その関係はその土地の不妊治療医が責任を持って分析することだと思います。我々も資料を出せと言われたら喜んで協力します。
その上で、ご自身の事情心情を鑑みるにこの程度の待機までなら負担できると決定して、その結果としてご負担分の安全性の向上を確保すること、その「この程度」というバランスポイントをどの辺に置くかというのが、患者さんがお決めになることだと思います。
時期の分散に限らず、患者さんにご説明して選択して頂く項目は様々にあると思うのです。その項目の一つ一つに関して、負担と利益のバランスポイントは患者さんお一人お一人に特有のものだと思います。
安全性以外にも追求する利益の項目は他にもあることでしょう(卑近なことではお受験の有利さなどまで含めて)。そのどの項目をどの程度に他項目よりも優先するかもまた、患者さんの価値観によって決めて頂くことだと思います。多項目が入り乱れ、組み合わせのパターン数は限りなく多くなることでしょうから、最終決定を他者が代替することは不可能です。
不可能と申し上げるその舌の根も乾かぬうちにで心苦しいのですが、繁忙期のNICUの状況があんまり非道いから、なんとか安全性を優先する方向でお考え頂きたいなと、新生児科医としては願っております。医者が書いて見せるグラフのなかで安全性が一番ピークになるポイントを選択して頂ければ、私どもとしてはとても有り難いのです。
そのような選択を、不妊治療医たちは患者さんにしっかりしていただいているのかと、状況の無軌道ぶりから、訝しんでおる訳です。ご不快を承知で再度この表現を繰り返しますが、まさに「ボーナスの札束を握りしめて駆け込んでこられる」とも言うべき、熱意は十分におありだが、説明を受けないと知りようもない種々の特殊事情については当然ご存じではない立場の患者さんたちが、たまたまその時期に駆け込んできておられるのではないか。その状況に乗じて、「患者を逃がさず」その時期に集中的に治療してしまおうということになっているのではないか、しかもその時点で一気に「成功」を狙おうとして治療の強度が過剰になるあまり一発で妊娠したはいいが三つ子になってしまったなどといった成り行きまかせの状況になっているのではないかと、怪しんでいます。邪推なんでしょうか。
選択肢があるということすら説明されておられないのではないだろうか、患者さんが選択したのは結局のところ「○月○日に××医院へ初診しよう」ということだけなのではないか、あとは大砲の弾が放物線軌道を描いて飛んでいくがごとく、発射スイッチをいきなり医者に押されたなり何のオプション変更も考えることもなく一本道をまっしぐらに突き進んでおられるような気さえするのです。
以下、蛇足かもしれませんが、
手の内を小出しにした形になってoctさんに言わなくてすむことを言わせてしまったということがあれば、お詫びしたいと思います。温度差(3)まで一気に書けていればご感想も違ったのではないかと推察します。ただ(3)はOctさんのコメントをいただいた縁で敢えて書く踏ん切りがついたような文章でした。(実は知り合いの産科医に読まれたらどうしようとかちょっと卑怯なことを考えなくもない文章です)。すみません。
「何かが欠けているように」思っているのは、「高いお金を払うのだから未熟児なんか要らない」と仰る人たちの道徳観に関してです。これはさすがに親になる人には言ってほしくない言葉だと、私は思うのです。価値観は患者さんそれぞれであるとはいえ、あんまり自分の価値観とかけ離れた言葉に接すると、そこまで人に言わしめるものは何かと考えざるを得ないのです。無警戒にこの「温度」に同調していると何かとんでもない渦に巻き込まれそうな気がします。
ご注進めきますが、「日本の賃金形態にまで言及されているようですが。」の最後のお言葉は、やはり読むものには捨て台詞の印象を与えるものだと思います。上記の「小出し」の私の不徳もあって申し上げにくい事ながら、やはりあのお言葉で終わられたコメントには反論させて頂かないと、医療職にあってブログをかいておられる他の方々にまで肩身の狭い思いをさせてしまうのではないかと思いました。
もう一つ、私はてっきりoctさんを不妊治療を受けておられる患者さん(おそらくは女性)と推測して返事を書かせて頂いておりますが、それでよろしかったでしょうか。

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