この点滴を決められる医者は今夜は私しか居ないのだ

若手が大学に帰って大学院に進学するというので19日は送別会だった。
私は自宅待機番だったのでアルコールを飲めない。飲めないなりに幹事がうまい店を選んでおいてくれて助かった。場所も自宅待機番の私が出て行ける距離だった。気分良く若手を労って、帰って寝て、1時間としないうちに超低出生体重児の分娩立ち会いに呼び出された。当然、そのまま徹夜することになった。よりにもよってこんな日にと思ったが、しかしまだ宴会の会場から引き抜かれずにすんだぶんマシだったのかもしれない。
翌日は水曜で半日オフであった。ふらつく頭で午前中の外来をこなして午後は強引に帰宅した。怠け者と言わば言えというものだ。700gの子に2.5mmのチューブを気管内挿管して24ゲージのサーフロー3本で末梢静脈・動脈・経皮中心静脈の3本ラインを取って、それだけでもう集中力使い果たしましたがな。だって俺が失敗したらバックアップは居ないのだ。臍カテという選択肢もあるから点滴失敗したら赤ちゃんが死ぬと言ってしまったら大げさだが。でも臍カテって後の管理が大変だから(管理が大変と言うことは管理される立場も危険だと言うことだ)総合的には末梢ラインのほうが良い。
私は新生児科を目指しはしたものの、こういう説破詰まった状況はあまり好きじゃない。人命を賭けた状況に「血湧き肉躍る」ような軽はずみな馬鹿はNICUには相応しくないとも思う。恐くて仕方ないくらいでちょうど良いかも知れないと思う。最近は針を握ったら恐怖が意識から退くようになったので、ちょっとは無心に近づいたのかもしれない。