小児外科転科の子を転院搬送。
最近、不思議にどの病院も愛想よく転院を引き取ってくださるようになった。昔は「渋々」感が電話口の向こうにひしひしと感じられたものだったが。あのどんよりした不愉快さはどこへ消え去ってしまったのだろうか。今ははつらつと仕事をする先生が、文字通り「喜んで」依頼を引き受けてくださるようになった。慶賀の至り。というか、めでたいめでたいと喜んでないでしっかり見習わないと。たまには私自身、転院を依頼される立場になるんだし。
頼まれるほうの態度が変わったのか、頼む私の態度が変わったのか、どっちだろうと思いながら帰ってきた。たぶんあの頃とは「中の人」が交代してるんだろうから、頼まれる側としては何の自覚もない可能性も高い。とはいえ私が思うに、頼まれる側で変化したのは「中の人」ではなくてその背後の人なんだろうという気がする。入院を引き受けるには私の許可が必要と、非公式にだが公然と考えている人が病院には予想以上に(むろん必要以上に)たくさんいて、外部から直接入院を頼まれる「中の人」の頭には、依頼の文言を聞きながらも脳裏にはその面々の顔がずらっと浮かぶものなのだ。その面々は当然のことに笑顔ではなくて、そのたくさんの渋面が「中の人」の表情まで渋面にしていたんだろうと思う。
他人様のご事情ばっかりじゃなくて自分のことも考えてみる。頼む私の態度がどう変わったか。たぶんああだこうだと要らぬことを考えず、これは小児科の私の仕事、ここからは他科の先生の仕事、とさらっと割り切るようになってるんじゃないかと自己評価したりして。たぶんそれはいろいろな意味で執着が薄れてきているということでもあろうが。優れた医者だと見られたいとかいった、言語化すればいろいろ恥ずかしい自分へのこだわりが薄れてきてるんだろうと思う。それが電話やら何やらでの、ものの頼み方の態度に出てるんじゃないかと思ったりしている。ひと頃よりは聞きやすい、という程度だろうけれどもね。
畢竟、自分が「がんばって」診る資格がある分野は新生児の限られた領域だけだと思うし。