ロールズ的「無知のヴエール」を用いた新生児生命倫理はどうだろう

ロールズ―正義の原理 (現代思想の冒険者たち)

ロールズ―正義の原理 (現代思想の冒険者たち)

重症新生児の治療中止をめぐる倫理的考察は主に、「いかに決定するか」の手続きを巡ってなされてきた。決定の内容については個々人の信念や直感に任されている。功利主義の枠組みを出ていない。したがって現状では、「正しい手続きに基づいた誤った判断」がなされうるのではないかと危惧する。

ロールズは「無知のヴェール」という仮定を提案している。自分がその社会においてどの地位に(政治的とか経済的とか)出生するのか分からないという仮定のもとで、それでも同意可能な社会のルールを追求するというものである。本人は思考実験として提案したものだろうが、その設定どおりの事態が、新生児医療の臨床では日常的に生じている。どのような身体で/どのような家庭に/どのような社会に出生するのかが分からないと仮定した際に、どのように処遇されると取り決められた社会になら、生まれてくることに合意できるだろうか。

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