あぶねえ・・・
午前中の外来を終えてNICUで午後の周産期カンファレンスの資料をつくっていたら、外来から呼び出されました。受付時間外にお出でだから診るようにと。
不平たらたらで外来に降りてみると随分とお腹を痛がってました。ウイルス性胃腸炎で片づけるにはちょっと深刻なように思いました。腹部エコーをオーダーしてみたら、糞石が入って腫れ上がった虫垂が見えたとの報告がありました。
触診ではまったく分かりませんでした。多分違うでしょと言ってしまってました。念のためねと言って血液検査と腹部エコーとやったのですが、血液検査では白血球増多もなくCRPも陰性で、化膿性の病変をお持ちの所見ではありませんでした。腹部エコーやってたから良かったものの、血液検査だけで帰って頂いてたらと考えると冷や汗ものです。
外科に対診を出して、夕刻に虫垂切除術になりました。大網が巻き付いており、かつ後方へ移動しており、腹膜刺激症状が明確に出なかったのだろうと外科からコメントがありました。3~4日で帰れる由。よかったです。あそこで腹部エコーやってなかったら穿孔から腹膜炎を起こして3~4週間の入院になってました。何とお詫びすることになってたか。
投稿者: yamakaw
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アッペ見落とすところだった
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「虚空の遺産」エドモンド・ハミルトン 早川文庫SF
古本屋で見つけてしまいました・・・へっへっへ。読みたかったのです。かねてからの念願でした。
月面に基地を作ったアメリカ人が、約3万年前に破壊され放棄された軍事基地を発見します。その遺跡は、かつて恒星間航行すら実現していた人類の祖先が、強大な敵に破れ放棄したものでした。発掘された資料を基に(その言語は古代シュメール語に類似したものだったそうな)恒星間航行用のエンジンを復元して、人類本来の故郷(アルタイルの第3惑星)へ飛んだアメリカ人たちは、3万年前に星間航法を奪われた祖先の生き残りと出会い、また、祖先を滅ぼした敵と出会うことになります。
平凡なSFならここでリベンジとばかりにその敵と戦うのでしょうけれど、この小説では、その敵に、祖先が星間航法を奪われた理由を尋ねるのです。その敵いわく、自分たちが地球人(性格にはアルタイル第3惑星人ですな)に星間航行を禁じたのは、地球人が力を頼みに征服を目指して宇宙へ進出してきたからだとのこと。それでは宇宙の多様性が失われるので、地球人の祖先は故郷の惑星に足止めされることになったのです。その敵は宇宙空港を焼き払い宇宙船を全て破壊していったのですが、都市を焼き払うことはなかったのでした。
ハミルトンがこの小説を発表したのは1960年です。彼は執筆時点で、50年後に祖国が世界を相手に何をしているか予見していたのでしょうか。ハミルトンはスペースオペラの旗手です。話のついでに銀河一つ吹き飛ばすくらいやる作家ですが、その最晩年にこのような枯れた小説を書いたのはどういう心境だったのだろう。 -
「テレビ・ビデオの長時間視聴が幼児の言語発達に及ぼす影響」
またまた日本小児科学会雑誌にこんなタイトルの論文が出ました。筆者にはあの片岡直樹教授も名を連ねておられます。
1歳半健診時点で発語遅れのある幼児にはテレビ・ビデオ視聴が一日2時間以上の子が多いという調査結果から、テレビ・ビデオ視聴が発語遅れに「影響を与えている」という結論を出しています。
調査結果と結論の間に飛躍があるように思います。発語遅れの子に長いことテレビを見ている子が多いという調査結果が出たと言うことは本当としても(調査結果が嘘ならもう論じるに値しません)、発語遅れの原因がテレビの長時間視聴であるという因果関係の方向性はこの調査結果だけでは定まりません。長時間視聴は発語遅れ(あるいは発語遅れをもたらす他の原因での発達障害)の結果であるという可能性を排除し得ません。この論文の論法なら、例えば、脳性麻痺の子に車いすの使用者が多いという調査結果をもって車いすが脳性麻痺の原因であるという結論が出せてしまいます。
こういう、結論が先に立った研究を、厳密な意味の科学と呼んでよいのかなと思います。
テレビ・ビデオの長時間視聴を止めさせたいという結論が先に立って、その結論に矛盾しない「調査結果」を発表してくるものだから、これは自然科学の方法論とは異なってきています。むしろ科学の衣を着た政治的主張あるいは布教に等しいと思います。 -
ネットにつながらないで生きている
今週1週間は異常に忙しかった。
世間の新生児科のスタッフはみなこうなのかも知れないけれど。
しかし新生児科は基本的に救急医療である。
計画的に仕事を分配することは他分野に比べてもかなり困難である。
こんな物を書いている次の瞬間にも呼び出しが鳴るかもしれないのである。
であればこそ人員の配分はピーク時を念頭に置かねばならぬ。
普段はメンテナンス業務とトレーニングをし、緊急事態に備える。それは消防隊と同じである。
新生児科が常に忙しかったら、それは構造的な余裕を失った状態になっているということだ。それでは突発的に発生する真の緊急事態に対応する余力がない。忙しくて火事場に駆けつける余裕のない消防隊には街を任せてはおけまい。
それにしても今週1週間は異常であった。忙しさのピークに常に乗っかっていた。波乗りというのはこういう気分なのだろうか。重症児の転入あり、超低出生体重児の緊急分娩あり、私用でもあれこれとあり。
ぼちぼちと遡って記録を書いていきます。 -
病棟に来ないと
12月9日
超低出生体重児がうまれた。
超未熟児が産まれた当日だというのに、夕方の回診のあと当直医はNICUを出て行ってしまって戻ってこなかった。そして夜10時すぎて、NICUに電話で状況報告を要求してきた。
人手がたりず多忙極まる準夜帯に長々とあれこれ聞くものだから、電話口に縛られる看護師の顔に怒気が浮かんできた。診に来いよとゴシックで書いたフキダシまで見えたような気がした。看護師が怒るのももっともで、この電話にかかった時間があれば十分NICUに入って赤ちゃんの様子を見るくらいは出来たのである(これなきゃ職務放棄である)。
なるほど病棟に来ない医師というのは看護師にこういう顔をされるのだな。
翌朝出勤してみたら、この看護師は状況報告と称して当直医を2時間おきに電話でたたき起こしていた。やっぱり医者は真面目に働いた方が楽なんじゃないかなと思った。
12月17日現在、赤ちゃんは元気です。 -
くたびれた当直明けに
読売新聞の小児救急の特集を誉める続き
【変わる小児救急】(下)夜間診療毎日が綱渡り
今日も当直あけです。NICUで胸腔ドレーンを巡って奮闘しほとんど徹夜でした。幸いにしてといいますか、季節はずれの大雨のおかげで深夜帯の救急外来が閑散としていて助かりました。朝からは救急も増えてきましたが、朝まで待って頂けたのですから誠心誠意拝見いたしますと言わんばかりに日曜午前中の救急外来をやって正午ごろ帰宅し、午後は暗くなるまで寝ていました。やっぱり疲れます。
この小児救急特集記事でも報道されていましたが、夜間救急を当直ではなくて夜勤シフトで行うことには大賛成です。そのためには、都市部で小規模の病院小児科が乱立しているような地域ではある程度の集約化も避けられないと思います。小児科医2人勤務の病院小児科が5箇所あるよりも小児科医10人勤務の病院小児科1箇所のほうが総計で10倍以上の仕事をしますよ。 -
部長が留守だと忙しい
未熟児新生児学会というのが開催中で部長が留守です。
部長が留守だとNICUは忙しくなります。
部長は朝夕の回診のとき以外には滅多にNICUに来ないので、業務の停滞は本来は起こらないはずなのですが・・・そこが人徳のなせる技なのでしょうか。
単に部長が「当たらない人」だというのが原因だとも思います。
当たる人当たらない人というのがはっきりと医者にはあります。看護師にもあるけど。
その人が勤務していると奇妙に入院依頼が立て込むとか、救急当直をしていると外来が千客万来になるとか。ヤブ医者だから入院中の子どもの診療をし損なって病態が悪くなって忙しくなるというのならまだしも、彼(または彼女)が勤務していると他所の病院で赤ちゃんが悪くなったりご自宅にいる(まるで当院にはかかったことのない)子どもがとつぜん病気になるとか、まるで巡り合わせの悪さとしか言いようのない人があります。
うちの部長は「当たらない」タイプです。むろん常勤なので、大抵は病院にいるからあまり目立たないのですけれど、たまにこうやって学会とか休暇だとかで留守にすると、明日から学会なので留守をよろしくと言って部長が帰ったその夜から新生児搬送の依頼が舞い込んできたりします。
入院患者が少なくなってきて病棟が空いてきたら、部長が休暇を取ればいいのです。
団塊の世代だからあんまり休みたがらないのですが。ここは販促活動と思って温泉にでもつかって骨休めしていただいて、病棟が埋まってきたら帰ってくる、と。
私は研修医の時は「当たる人」でした。
何せ阪神大震災に当たりましたから。
地震の日以外にも当直をしていると奇妙に救急が多いように感じられ、これは自分が未熟で診療に手間を取るから行列が出来ているのに違いないと思って反省しておったのですが、2年間の年季が明ける間近に謎が解けました。救急の事務当直の人が電話問い合わせに対して「今日の救急当直は小児科専門ですから」と仰っておられたのでした。そりゃあ多くなるわな。 -
あれこれと
NICUでガウンや帽子を着なくなってしまうと涼しくて善いのだけれど、なんとなく裸で居るような一種頼りない感じがします。まあ、そのうち慣れるのでしょう。
昨日の19時のNHKニュースで、本日のニュース概要とかいって流行語大賞の後に卓球のフラッシュがあったもので、今年の流行語大賞は愛ちゃんの「たー」だったのかと早合点してしまいました。本人ですらどう発音しているのかわからない流行語大賞ってのも面白いかと思います。所詮はどうでもいい話だし。
子どものアトピーを苦にして一家心中という報道に接して暗澹としました。一家心中するくらいならステロイド全身塗布でも善かったんじゃないかなと思いました。ステロイドって死ぬより怖いのかな。もしも本当に子どものアトピー性皮膚炎が一家心中の原因だったのならぜひその子の主治医のコメントを聞いてみたいです。治療は適切だったのですか(まさかまさかステロイド外用剤には副作用が強いから処方しませんとか仰っては居ませんでしたよね)? ご両親がここまで追いつめられておられた様子を察知しておられましたか? ひょっとしてひょっとしてアトピーなんて死ぬ病気ではないからと思ってはおられなかったでしょうね。
主治医を責める(手抜き治療をしてたら責めますけど)のが主目的ではなくて、こんな風に病苦で一家心中なんてことになったケースから何か教訓を得られないかと思います。端的に言って、私が外来で一回でも診たことのある子がその病気を苦にして一家心中なんてことになったら泣こうに泣けないですから。 -
朝日新聞が震災の特集を書くと腹が立つ
読売を誉めた返す刀で朝日新聞を貶します。
朝日新聞が震災について何か書いてます。
私はあのとき神戸にいました。焼け跡のテレビでは朝日新聞の購読申し込みCMを繰り返し繰り返し放送していました。今でも朝日新聞のCMソングを聴くと焼け跡の光景がフラッシュバックします。神戸新聞の社屋が倒壊した隙に読者を横取りしようと言う魂胆が見えてました。
火事場泥棒の糞新聞が。このうえまだ震災にたかって売ろうとするか?
社会正義の立て役者みたいな顔をして正論をぶってても結局はこうして汚い売り方をするのが新聞のあり方なのだなと思うと悲しかったですな。今はいしいひさいち先生としりあがり寿先生の漫画を読むために購読しています。たまーに記事も読みます。まあ大多数の記者は本当に自分のペンの正義を信じておられるのでしょうし。でも読者としては震災前ほどにはナイーブではなくなったですな。
新聞を読むのをいっさい止めようと思わなかったのは、京都新聞が神戸新聞を支援するという意気を見せてくれたからですが。そういや今は京都に住んでるし。京都新聞取ろうかな。 -
読売新聞の小児救急の特集を誉める
私が読売新聞を誉めるなんてかつて無いことだと思うのですが・・・この3日間ほど特集されていた小児救急に関する記事は出色の出来でした。素晴らしい。
【変わる小児救急】(上)自治体の壁超え新拠点
【変わる小児救急】(中)軽症から救命一拠点で
小児科医が過労死したとか爆発寸前だとかたらい回しで子どもが亡くなったとか色々と先の見えない報道ばかりの中で、こうして頑張っている試みを紹介していただくと嬉しいですね。
