GCU加算新設でまたぞろ難民がでないか?という懸念

医療事務|保険診療点数|診療報酬|レセプト|調べるならしろぼんねっと-H22: 第2部入院料等 第3節特定入院料 A303-2 新生児治療回復室入院医療管理料(1日につき)

先日の午後おそく大学NICUにいたら、市内の大手産科医院から新生児入院の申し込みがあった。赤ちゃんや親御さんには失礼ながら、ありふれた病状のように思えた。大学でないと診れない状況じゃない。私の古巣の領域だ。そう大学の当直医に行ったら、いやどうも先生のところからは断られたみたいですよと言われた。

翌日は古巣で当直の日だったので、出向いた折に、なぜ断ったのかと確かめてみた。すると留守居の若手曰く、満床だったからだと。でも軽症ばっかりじゃないかと問い返してみた。本当にこの入院は取れなかったのか? 答えて言うには、いや医師も看護師も余力はあったし取れるには取れたんだが、GCU加算を申請するに当たって定床以上に入院させてはまずいらしいから断らざるを得なかったんです、とのことだった。

これまで新生児特定集中治療室管理料いわゆるNICU加算は頂いてきた。当院の定数は9床。床面積やら看護師の数やらで決まる数だ。しかし病状が回復した赤ちゃんが移動する先のGCUには、そのような条件限定のお金はついていなかった。一般の小児科入院と同じく、出来高払いのお金をいただいていた。そして、NICUを出るほどには回復したがまだ退院はちょっと、という赤ちゃんでいつも形ばかりの定数を超えていた。それは全国いずこも同じで、GCUは定数超過した赤ちゃんが「一人飲み」をしているのが現状だった。

むろんその現状が宜しいものだとは言えない。だから今回、新生児治療回復室入院医療管理料いわゆるGCU加算が新設されたのは全く理にかなったことだ。厚生労働省もこの現状には改善が焦眉の急だというのは分かってるんだ。で、いつもの飴と鞭のやりかたをとった。この管理料新設は、お金は出すけど出す以上はあんまり無茶をやると取り締まるよというメッセージなんだ。赤ちゃん6人に看護師1人以上を常時配置すること。そういうものだろうと私も思う。それは全く正しい方策だし、それが新生児医療の発展ってものだろう。

ただ問題は、だ。みんなでこれから正しいことをやることにしたらすべての赤ちゃんが救えるのか、ってことだ。うちは満床ですからほか当たってください、で済むのか? ほかを当たればどっか空いてるほど京都のNICUベッド数は潤沢なのか? 全国的にはどうなのよ。全国のNICUがGCUの入院数まで法令遵守を徹底したらだよ、赤ちゃんをNICUからGCUに出せないからNICUに新規入院を受け入れられませんって状況がどんどん起きるんじゃないですか?

法令遵守してるからうちはこれでよろしい、とか、監督下にある医療機関が法令遵守してるから当地はこれでよろしい、とか、そういうことを病院や府庁の人らに口にしてほしくないんだ。それで行き先を失う赤ちゃんに対して目をつぶってほしくないんだよ。

このあいだ関東へ送り届けた赤ちゃんの、入院先の先生から丁寧なメールをいただいた。「○○(その自治体の地名)の赤ちゃんをいままでありがとうございました。」と書いてあった。涙が出た。苦労が報われた、というより、この子を幸せな土地へ送ったと思った。こういう熱くて爽やかな台詞をさらっと決めようよ。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中