
- 作者: 宮本常一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1984/07/16
- メディア: 文庫
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NICU当直は真夜中の入院1件。すこし眠い。
宵の口は本書を読んでいた。日本の村落での伝統的な教育が失われつつあるとして、宮本常一が本書を著したのが昭和18年だとのこと。
一般向けの書籍であるし、いくら御大宮本常一とはいえ故郷のことではあり多少の美化はあるだろうけれど、それにしても、昔の村落の大人が子どもを育てるあり方には、現代とは次元の違うものを感じる。よく新聞の論説に書いてある、社会全体で子育て云々と言ったお題目の、具体的な例を初めて読んだような気がした。
しかし既に本書において既に宮本が、「他家の子を叱れば、その親がかえって怒るようにまで変わってきた」と述べているあたり、その美風は70年前に既に失われつつあったのだろう。現代の子どもが駄目なのは昔のような教育がなされないからだと、仰るむきも多々あるが、昭和18年当時すでに伝統が失われつつあったというなら、彼ら保守派ご自身、ご自分が思うほど保守的にご立派な教育は受けておられないんじゃないかと拝察したりする。孔子だって自分が生きていたわけでもない周の時代を理想として弟子を教育していたわけだし、それが一概に悪いとは言えないにしても、まあ昭和18年当時すでにそうだったのだねという事実も、記憶されて良かろうと思う。
本書に登場する宮本の祖父や父しかり、また他書に登場する人々にしても、宮本の紹介する人物は、この土地で生きていくしかないと覚悟を決めて粘り強く生きておられる方が多い。もとより優れた人格を備えた方々なのだろうが、それ以上に、その覚悟が人格を練り上げるという一面もあるのだろうと思った。俺もまた今後は京都で生きていくしかないんだなと思うと、普段の自分の軽佻浮薄なセカイ系の発想を反省させられるように思った。