
- 作者: 斎藤貴男
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2010/10/26
- メディア: 新書
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著者によれば消費税は企業間の取引で弱い立場にあるほうが不公正に負担させられ、輸出企業は益税で潤い、正社員の派遣社員化を促進し、滞納率も飛び抜けて高い、とのことで悪税なのだという。
何か論理の飛躍がありそうな気がする。
大企業が中小企業の生き血を吸うような不正な取引慣行があるのは、それはそれでそれ自体の問題なのではなかろうか。現状で消費税の税率を上げたら上げた分を中小企業がさらに負担することになると筆者は主張するが、それは消費税の仕組みに内在する避け得ない事項なのだろうか。消費税をとりやめたら大企業は悔い改めて中小企業と真っ当な取引をするようになるのだろうか。
運用での課題なのではないだろうか。派遣社員化の促進する結果になっていることも、滞納率が高いことも、それはすべて運用の問題ではなかろうか。
輸出企業の益税については、なるほどと思うのだが。大企業が消費税増税を歓迎するわけですな。益税が問題であるというのは私も賛成だ。本書でなるほどその通りと思ったのはそれだけ。
各論のレベルで著者があげるいろいろな例も、どうかと思うところが多い。税収に占める消費税の割合がスウェーデンも日本もほぼ同じといわれても、それは日本の消費税が高いからじゃなくてスウェーデンの所得税が高いからでしょうよと思う。著者は消費税が中小企業を潰しにかかる税だといって憤っているが、スウェーデンこそ、政策的に中小企業保護なんてまるでしていない国なのに、そのスウェーデンを正しい例として準拠するのは矛盾していると思う。高福祉で失業者の面倒は見るから商売が立ちゆかなくなったら安心してつぶれてくださいね、というのがスウェーデン政府の企業に対するスタンスではなかったか。著者もご存じないわけではなかろうに。
また、アメリカには国税としての消費税がない。と著者は言うが、それは連邦じゃなくて州のレベルで徴税してるんではないだろうか。私がアメリカからPEDIATRICSとか医学雑誌を買うときにはウエブサイトで税がどうこうと言われるけどね。
なにより、著者の主張であれあれと思うのが、日本の財政難に関する認識である。お定まりの、累積赤字は900兆円で個人資産が1400兆円だから500兆円くらい景気対策に使っていいんだという、あれ。そりゃあ今年限りで財政の収支が黒字になってりゃいいんだろうけどね。これからも赤字はどんどん積み上がっていくでしょうよ。そしていつかは国債が売れ残る日が来るように思うのですが。緻密に消費税の問題点を指摘しつつ、その点をまるっと無視してるのがアンバランスだと思う。だいいち、個人資産を1400兆円全部国債に突っ込んだら、それこそ、著者が重視する中小企業に融資するお金がなくなるんじゃないだろうか。
>消費税をとりやめたら大企業は悔い改めて中小企業と真っ当な取引をするようになるのだろうかその通りだと思います。価格は需給(と力関係)で決まるのですよね。
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TigerBalm様 コメントありがとうございます。御礼遅くなりました。あんまり露骨に力関係で決めていては世の中みんなで衰亡していくんだろうと思います。互いの正義感とか公正さの価値観に照らしてこの程度だろうという落としどころがないものかと思います。
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