水痘ワクチンの定期接種化に際して、するべき事と、してはいけないこと

水痘も定期接種となることが決まった。着実に進歩している。

日本小児科学会の推奨では1才のうちに2回接種することになる。肺炎球菌やHibの導入で0才児のスケジュールがかなり忙しくなったのだが、今度は1才児のスケジュールが密になる。個別接種での日程立案はかなり面倒なことだと予測する。今後はおたふくかぜの予防接種もあることだろうし*1

接種率を上げるためには、この面倒くささと闘わなければならない。反予防接種派の皆さんを論破することは二の次である。我々小児科医は、世の中の人は予防接種推進派と反予防接種派にくっきり別れているものと思い込みがちなんだけど*2、実際のところ、世の中の大多数の人たちにとっては、予防接種はけっして第一の関心事ではない。予防接種に子供を連れてこない人たちの多くは、予防接種の利点と欠点を熟慮の上で接種しないことを選択したわけではない。すっかり失念していたか、たまに思い出しはしていたけれどよく分からないんで先送りすることにして頭から追い出していたかというところだ。

だから我々が外来で保護者と語るとき、水痘の予防接種をしていないと判明しても、責め立てたり論破したり喧嘩したりしてはいけないんだ。人間、自分の行動に特に理由がなかったと認めるのはストレスなものだし、予防接種していませんねと指摘されればなぜしていないかを語り出すんだろう。といってそうそう独自の理論を生み出せるわけもなし、どこかで聞いた反予防接種の理屈を持ち出してくることになる。そうしてうろ覚えの反予防接種論を語るうち、単純に忘れていただけの予防接種抜けが、その場で自己生成的に、「予防接種をしない選択」に変容してしまうんだ。誰かに何かを説得したいとき、いちばん有効な手だては、相手自身の口でその何かを語らせることなんだから。

我々が行うべきことは、淡々と予防接種の日程をたて、予約を入れることにつきる。我々の目標はあくまでも子どもたちの健康であり、その実現のための水痘の流行阻止だ。アポロ宇宙船は実は月に行っていないんだという主張をする人たちを論破したところで、宇宙開発が進展するわけじゃないんだ。

*1:ちなみにB型肝炎はDPTPの4種混合にHibとともに統合されることになるだろう。

*2:たぶん眼科医は世の中の人は眼鏡派とコンタクトレンズ派とレーシック派にくっきり分かれているものと思っている。

水痘ワクチンの定期接種化に際して、するべき事と、してはいけないこと” への2件のフィードバック

  1. いつもこっそり読ませて頂いています。今、1歳8ヶ月の息子がいて、予防接種がひと段落したところです。母子手帳の予防接種の欄はびっしり。若干の達成感を感じております(笑)ただ、無知な新米母としては予防接種に対する小児科医の方々の考え方はある程度揃えて頂きたいです。私は下調べがっつり派なのでリスクは飲んで同時接種で進めましたが、医師によって全く同時接種をしていただけなかったり、独自に同時接種の組み合わせを決めていたりで、非常に困りました。また、定期じゃない予防接種は不要だという医師もいらっしゃいました。いまだにもやもやしております…。

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  2. ご意見ありがとうございます。いま小児科学会が以前に比べて強い調子で予防接種を推進するようになっていますので、今後は学会推奨の方針に統一されていくと予想しています。とはいえ、医師は一人一人が自律性をもった専門家であるはずなので、業務命令的な統一はなかなか困難です。内部でじっくり議論をかさねて納得をえていくのをお待ちいただきたくお願いいたします。

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