薬を貰いに

根が狭量な性格であるもので、親御さんの言葉尻にひっかかることがある。外来での問診の最終に、「・・・で薬を貰いに来ました」と言われると、貰うって言われても無料配給じゃないですよ、と答えたくなる。今さらいい年してそんなこと口に出しては言わないけれど。

昔はそういうときには「お薬をいただきに」と言ってたんだろうなと思う。よく知らないけど。相手にしてもらうことを有り難く受けるという意味での「いただく」が、次第に、只で貰うという意味での「いただく」に変化して、そのうちつい実も蓋もなく「貰う」という言い回しをするようになったんじゃないかと思う。乳幼児医療うんぬんで健康保険の自己負担分を自治体が肩代わりするようになったこともあり、即物的なレベルでも薬は只で貰えるものになったことが、その背景にあるんだろうと思う。

薬を「貰う」人に、その薬を「くれる」のは、私ら医師じゃなくって、保険料や税金を負担してくださっている世間の皆様なのだけれども。むろん「貰う」人自身も他の多くの場合は「くれる」側に回ってるのだろう。保険料や税金の負担が軽いと思っておられる方はそう多くはないはずだが、自分も含めたその多くの皆様のご苦労を思い浮かべれば、やっぱり、「貰う」という言い方はなかろうと思う。

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