自分の父が出勤の時に何を着ていたか。むろん今の私のような勝手な格好で出勤できる商売では無かったけれども、でもどう考えても夏には半袖のワイシャツにネクタイだったように思うのだが。彼が夏に背広の上着を着ていた記憶がどうしても出ない。
あのころ、長崎本線のディーゼルカーも扇風機がせいぜいで冷房車なんてほとんど無かった頃、勤め先のオフィスも冷房が入っていたかどうかの頃、そのころのサラリーマンって夏に背広を着てたのか? ちゃんとした人間は夏でも背広を着るなんて迷信は、エアコンが当たり前なんていう贅沢をしはじめたごく近年の産物なのではなかろうか。
夏に着る背広なら、「着ていないときよりも涼しい」背広でなければならないはずだ。汗のにおいを分解しつつ強力に蒸散させて放熱するような背広を、ようするに木の葉よりマシな背広を、作ってみろと言いたい。