
ちいさなちいさなわが子を看取る NICU「命のベッド」の現場から
- 作者: 川畑恵美子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/04/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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けっきょく本書は小児緩和ケアの不在に関する報告なんだよな。行われた新生児集中治療のお話と言っては、たしょう焦点がずれる感がある。本書を読んでて、新生児科医がいろいろ考えたり苦労したりしているのは分かるんだが(それはまあ同業者だし)、しかし同じスタッフ・同じチームが治癒を目指す治療と緩和ケアとを同時にやるってのは、そもそも構造的に無理なんじゃないかという気がしてならない。新生児科はとことん治癒を目指す、緩和ケアチームが初期から介入して種々の緩和を行う、この担当者を別立てにするのにかなり大きな意味があると思う。
父が経理の仕事をしていて、子どもの頃から予算とか監査とかといった話を聞かされて育ったんで余計にそう思うのかも知らんけど、集中治療屋が緩和ケアもってのは、予算の執行と監査を同じ人間がやってるようなお話ではないかと思えてならない。端的に言って治った大多数は新生児科の勝ち、治らなかった少数例もじゅうぶん緩和ケアをした新生児科の勝ち、なんて心得でこのままやっていくのでは、僕らに「君ら間違ってるよ」と誰か言ってくれる仕掛けは僕らの仕事の仕組みのなかに用意されてあるのだろうかと、ちょっと危機感を覚えたりする。
たぶんそれはブレーキのついてないピストバイクをかっとばしながら、俺はペダルを勢いよく踏みすぎてるんじゃないかとか、止めたいときにペダルを止めたら本当に止まれるんだろうかとか、危惧するようなお話で、いやそれって深刻そうに考え込んで見せてもあんまり賢くは見えんよと仰られたらまことに返す言葉もない。じゃあブレーキをつけろよフリーホイールつけろよって話にすぎなくて。