雪かき仕事としての小児救急

内田樹の研究室: お掃除するキャッチャー
重要な「お題」を頂いたような気がして、この数日考えている。

人間的世界がカオスの淵に呑み込まれないように、崖っぷちに立って毎日数センチずつじりじりと押し戻す仕事。

小児の時間外診療もまたそういう仕事ではないかと思った。
診ても診ても子どもたちは次から次にやってくる。
さすがに、感謝もされず対価も支払われないというほど酷くはない。少なくとも当院の時間外救急にお出でになる子の親御さんには、礼儀知らずな人は居ないし、払いを踏み倒す人もない。しかし、
ホールデン君の夢想は美しいが甘い。よく前を見ずに崖っぷちに走っていく子どもも、例えば毎秒3人とか走ってくるようでは一人では到底捕捉しきれない。崖の総延長が1kmもあったとしたらどこからともなく現れるにも徒歩では無理だ。こどもたちが24時間365日遊び続けていたとしたら、交代要員が2人とか3人とかでは済むわけがない。
望みどおりの仕事に就けたとしても、ホールデン君の希望はじきに壊されるだろう。朝8時半から彼は休む暇もなく崖っぷちを走り続け、延々と子どもたちをキャッチし続け、午前3時にキャッチし損ねた153人目のこどもの墜落死の責任を問われることになる。
キャッチャーの仕事を敢えて引き受ける人物はホールデン君には限らないだろう。しかし崖っぷちの状況次第では、彼らも保身を考えざるを得ない。例えば崖っぷちを区分けして、自分はこの15mの区間に走ってくる子どもを引き受けると宣言するとか、自分はもう少し広い範囲をやるけど赤い服を着た子専門ね、とか。

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