電話相談事業の危険さ 2

電話相談には必然的に、無診察で治療してないかという疑問が付きまとう。一般診療では診察室に入ってくる足取りや顔色を見ることから既に診察は始まっている。言語で受け渡される情報は案外に少ないものである。


今でも病院に直接電話相談が掛かることがある。小児救急の電話相談に答える原則は、現状では極めてシンプルである。「御受診下さい」の一点張りである。原則はそれだけであるが、それだと実際に受診した際に開口一番「電話で来いと言われたので来ました」と言う親御さんがあってスタッフ一同の憤激を買うので「ご心配でしたら御受診下さい」とすることが多い。
外国には、そう簡単に救急なんてかかれないよ(なんせ外国の田舎はスケールが違うらしい。私など長崎から本州に出てきただけで本州の田舎の奥深さに参ったものだが)なんていう土地のために通信販売があり電話医療相談がある。そういう状況での電話医療相談というのは確固とした専門分野である。専門書も出版されている。眠い目こすりながら片手間に出来る仕事ではない。こと「電話相談」に関してはこちらも素人なのだ。
実際に受診したさいに、「電話で受診しろと言われたから来ました」と言う親御さんはかなり医療スタッフ一同の憤激を買う。こっちが頼んだから来て下さったような言い方をしないで下さいよと思う。電話口でも「いかにわが子が軽症か」を力説する親御さんもある。医者や看護師を電話口に縛り付けるだけで実際に救急にお出での患者さんの診療を邪魔してるんだからご自分で軽症だと思っておられるのならさっさと電話を切らせて欲しいと思う。こちらに「大丈夫だから救急受診の必要はありません」と言って欲しいんだろうなとは分かってるんだけど、たぶん、そういう子が後で重症だったと判明したら、救急を受診しなかったことの責任はこちらが負わされるんだろうなと思う。私ら医療関係者とて我が身を守らなければならないのだから、電話で「大丈夫」とはまず言われないものと思って頂いたほうがよい。
この「憤激」の原因についての考察。以前、リスクを共有できる相手だけが仕事の仲間だと書いたが、この概念は親御さんや患者さんにも適用できるような気がする。患者さんは我が身を掛けてるんだからリスクを持たない訳じゃないけれど、親御さんにも、せめて「救急を受診すると決める:たとえそれで大丈夫であったと分かっても無駄足で良かったと納得する」くらいのリスクは取って欲しいと思う。軽症で無駄足だったからってこっちにその責任を振って貰っても困る(どのみち小児時間外受診の大半は翌日でも良い受診、極言すれば無駄足なのである)。お膝の上の子はあなたの子である。
 と、いろいろ偉そうに書いたが、このまえ娘が喘息の発作で寝られなかったときはこれから起きて救急に連れて行くべきかどうかと私も迷った。誰か第3者の目で「連れてお出でよ」と背中を一押ししてくれる人が居てくれたらなと思った。そういう役目なら電話相談でも出来るような気がする。そうやって救急へこられた方への対応をフレンドリーな歓迎モードでやるようにすれば、「そっちが来いと言ったから」の類の無用な責任の押し付け合い言説も口に出されることはなく、お互いに気分良く救急外来を運営できるんだろうなと思う。
そのためにも、小児救急を当直ではなく夜勤でやること。まずこの条件をクリアしないと他には何をやっても弥縫策である。

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