インフルエンザ脳症のガイドライン

11月25日
23時ころ帰宅。インフルエンザ脳症の診療ガイドラインが出ていると集中治療のMLで知り、国立感染症研究所の感染症情報センターWebsiteからダウンロードする。縮小印刷して手帳に貼り込む。こういう重要な情報を小児科以外の先生から聞いておもむろに入手というのはいささか遅きに失したような気もする。まだシーズン前だし間に合ったと言えば言えるのだが。ダウンロードが妙に重かったが、おそらく同じ投稿を読んで全国から一斉にダウンロードされてサーバがひいひい言ってるのだろうと思う。こういう重要な情報のリリースを見逃さないようにしようと、アンテナに登録する。お役所のサイトなのにアンテナ登録者も意外に多くて、こちらでも同じ事を考えた医者がたくさん居たって事だろうなと思う。
糊がないと妻に言ったら娘の部屋から香料入りのスティック糊を出してきてくれた。娘も妙な女の子グッズを使うようになってきた。
無駄な作業に終わることを祈りたい。こんな資料が役に立つ状況にはできれば遭遇したくない。春になってシーズンが終わった頃に、準備してたけど無駄だったねで笑えればそれが一番よい。でもうちのような場末の救急外来でも、過去にインフルエンザ脳症の子が受診したことはある。インフルエンザで熱性痙攣をおこし痙攣後の混迷からなかなか回復しないという子にどう対処したらよいのかという点も確かめておかねばならない。熱性痙攣後の混迷ならたいてい5~6時間もしたらけろっと目を覚ましてこられるのだけど、5~6時間を待つ間ただ祈るだけで済ませられるほどには、私は普段の心がけが宜しくない。
ぺたぺたと糊仕事をしながら、内田樹先生の「『責任を取る』という生き方」を読む。インフルエンザ脳症なんていかにも医療紛争に絡みやすいテーマの資料をいじりながら読むには、適時といえば適時、気が重いと言えば獅子咆哮弾でも撃ったかと思うほどに気が重い内容である。
内田先生がここで仰る「責任を取るという生き方」はしかし、自分一人だけが採用するのは困難だ。他責的・傍観者的な人たちに囲まれて自分一人が「責任を取ります」なんて言った日には、事あるときにスケープゴートにされるのが落ちだ。
いざというときにスケープゴートにされないためにも、普段から小出しに自責的になっておいて周囲の「社会的な承認や敬意や愛情を持続的に確保する」のが巧みな生き方なのだろう。だからって訳でもないのだろうけど、医者になって一年目二年目で大変にお世話になった先達から、「患者さんの身に起きることはすべて主治医の責任やからね」と繰り返し言われた。あれは道徳ではなくて処世術であったのかと、今さら思う。

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